2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanisms of boundary lubricant film formation and breakdown based on analysis of surface multilayer crystal structures
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22H00188
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
八木 和行 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50349841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 朋子 京都大学, 工学研究科, 教授 (00340505)
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
杉村 奈都子 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 客員准教授 (00563959)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | トライボロジー / 境界潤滑 / 結晶構造 / X線回折法 / 放射光 / 添加剤 / 酸化膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
九州大学八木准教授の研究グループでは放射光XRD分析方法により境界膜の検出が可能かどうか検証を行った。実験装置にはピンオンリング型の摩擦試験機を用いた。実験装置の上部には可視光カメラと近赤外光カメラを設置して実験中の摩擦面のようすを観察できるようにした。X線は実験装置側面より入射させ、反対側にX線検出素子を二次元配列させた検出器を設置して摩擦面から検出されるX線回折光を取得した。使用した潤滑油は硫黄系極圧添加剤である。実験を行った結果、硫黄系極圧添加剤由来の反応膜である硫化鉄が生成されるようすを取得できることが明らかになった。また、酸化膜であるFe3O4も同時に検出されており、鋼、酸化膜、境界潤滑膜がそれぞれ本研究課題で提案した観察システムにより検出可能であることがわかった。 京都大学平山教授の研究グループでは、表面上にある酸化膜が添加剤の吸着におよぼす影響を調べるために既存の原子間力顕微鏡に環境制御チャンバーを取り付け、しゅう動中の雰囲気制御を可能にした。その結果、例えば、脂肪酸系油性剤は金属酸化膜表面に吸着して摩擦係数を下げるが、無酸素環境下で金属表面を摩耗させて金属素地面を露出させた後に同じ油性剤を滴下したところ、摩擦係数は低下しなかった。これより、金属素地面に脂肪酸系添加剤は吸着しにくいことが示唆された。 兵庫県立大学鷲津教授および鹿児島高専杉村准教授のグループでは、添加剤の金属および金属酸化物表面における吸着特性を調べるため、反応分子動力学計算プログラムを用いた添加剤および基油との相互作用に関する解析手法を提案した。その結果、従来から実験的に知られていたチェーンマッチングを定量化できることを示した。また、SPH法を用いて表面多層の状態と運動を再現するために確率論的な手法を用いた多層間ポテンシャルの粗視化、応力スキームの精査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の各研究グループの目的であった放射光その場XRDによる境界潤滑膜の測定、鋼表面への吸着膜の評価方法の確立、シミュレータによる添加剤の吸着挙動を再現することに成功しているため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
SPring-8の利用にあたっては申請を行う必要があるが、数回不採択の通知を受けた。利用が保証されたものではないため、申請書作成にあたってはこれまでに得られた知見と不明瞭な点を明確に区別し、放射光施設の利用が必要不可欠であることを強調していく。また、不採択になった場合でも大学で摩擦実験や境界膜の表面分析を行い、その場観察に向けた基礎データを蓄積していく。
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