2023 Fiscal Year Annual Research Report
古生物運動制御学:絶滅動物の運動様式の革新的復元方法の創成
Project/Area Number |
22H00203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 洸 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (10827611)
加納 剛史 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80513069)
佐藤 たまき 神奈川大学, 理学部, 教授 (90466912)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 運動様式復元 / 古生物 / ロコモーション / 運動制御 / 制御原理 / 首長竜 / 遊泳 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 大型回流水槽の設計・製作: 前年度に引き続き大型回流水槽の構築を行った.これまでに比べて縦と横のサイズが2倍となる水槽の製作が終了した.実際に水を入れて流れが適切に出ているかをPIV計測により確認したところ,流速の時空間分布に若干のばらつきが見られ,製作した回流水槽の整流効果には改善の余地があることが明らかとなった.そこで,3Dプリンタで整流板を作成して追加することにした. (2) 前後ヒレ間協調制御のありように関する考察: 首長竜型ロボットの体幹がピッチ軸周りで自由に回転できるようにした条件下で,前後ヒレ間の協調のありようについて考察した.具体的には,前後ヒレ間の運動位相差を変更した場合に推進力がどのように変化するかを,力センサを用いて計測した.回流水槽の整流効果に多少問題がある条件下での予備実験ではあるが,前後ヒレ間の運動位相差によって体幹の安定性と推進力が変化する様子が観察できた.これは次年度の実験に資する知見である. (3) 頭頸部とヒレ間協調のありように関する考察: 首長竜の遊泳における頭頸部と前ヒレとの協調様式のありようを考えるため,ペンギンが示す頭頸部と前ヒレの協調様式に関する考察を行った.実際にペンギン型ロボットを構築して大型水槽で遊泳させてみたところ,頭頸部と前ヒレの運動位相差は,発生する推進力に強い影響を与えうることが実験的に明らかになった.これも次年度以降の実験に資する重要な知見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胴体を介した前後ヒレ間の双方向的・流体力学的相互作用を考察するための,首長竜ロボットの固定装具の開発は完了した.大型回流水槽の構築もほぼ終了したが,回流の整流効果には依然として改善の余地がある.前後ヒレ間の双方向的な相互作用の存在下で首長竜の遊泳様式の復元を考察する本研究は世界初の試みである.説明能力の高い仮説や実験結果を提唱するためにも,回流水槽の整流効果の改善は喫緊の課題である.これが解決し次第,可及的速やかに実機実験のフェーズに移行したい.
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Strategy for Future Research Activity |
第一に,大型回流水槽の整流効果を改善し,実機実証環境を可及的速やかに整備する.具体的には,PIV計測で整流効果を定量的に検証しながら整流板の追加・実装を行う.第二に,製作した胴体を介して前後ヒレ間の双方向力学的相互作用を活用可能な首長竜ロボットプラットフォームを用いた実機実験を開始する.具体的には,前後ヒレ間の協調様式が,胴体が固定された場合とどのように異なるのかを,PIV計測などを活用して実験的に検証する.第三に,前後ヒレ間だけでなく,左右のヒレ間の協調に関する考察を進める.ここでは,パドリングを行うスッポンなどの動物の遊泳様式との比較検証を行う.第四に,分担者の佐藤をはじめとする古生物学者と定期的にミーティングを開催し,得られた運動様式の妥当性を古生物学的な視座からも検証する.
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