2023 Fiscal Year Annual Research Report
High-Power Coherent THz Source Based on GaN IMPATTs
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22H00213
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
天野 浩 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60202694)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | GaN / IMPATT / マイクロ波 / ハイパワー電磁波源 / Hi-Lo型 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度より行っている単一走行型のHi-Lo型IMPATTダイオードに関して,GaNの高電界特性や降伏電圧,現有の測定系などを考慮して現実的な範囲でのデバイス設計を行った。その結果,Hi層ドーピング濃度を2.0×10^17 cm^-3程度とすることで,バンド間トンネルによるリーク電流密度を10^-4 A/cm^2以下に抑えられ,アバランシェ降伏が期待できること,またHi層膜厚を0.8 ミクロン以上とすることで,Lo層ドーピング濃度に関わらず,降伏電圧が400 V以下となり,p+-nの階段接合型と比較して動作電圧を低くできることを見出した。このように設計した構造を基に,実際にデバイス作製を行い,逆方向電流電圧特性から,降伏直前の電流密度は10^-3から10^-4 A/cm^2であり,設計通りにトンネル電流が抑制されていること,温度の上昇に伴い降伏電圧が上昇しており,アバランシェ降伏が得られていることを確認し,発振周波数についても設計通りに15 GHzでの発振が確認された。発振効率が特に低入力領域において10倍程度向上していることが確認できた。発振出力は接合直径の増大に伴い増加し,最高で25.5 W、直流から高周波への変換効率は2 %が得られた。これはSi,GaAs IMPATTダイオードのトップデータに並ぶ出力であり,GaN IMPATTダイオードの高出力発振素子としての優位性の一端を示したと言える。次にSi IMPATTダイオードにおける40 GHz帯導波管共振器を基に,30 GHz帯導波管共振器を作製した。空乏層幅1.6 ミクロンのGaN Hi-Lo型IMPATTダイオードを作製し,発振特性を評価したところ,18~38 GHzにわたる多周波数動作での発振が確認でき,GaNを用いてミリ波帯での発振に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空乏層幅1.6 ミクロンのGaN Hi-Lo型IMPATTダイオードを作製し,発振特性を評価したところ,18~38 GHzにわたる多周波数動作での発振が確認でき,ミリ波帯での発振に世界で初めて成功している。主要な発振は20 GHz帯であり,次に主要な発振は37 GHz帯(36から37 GHz)であった.その他30 GHz帯(26から33 GHz)での発振も確認された.発振出力は20 GHz帯では11.5 W(効率1.7 %)が,37 GHz帯では25.9 mW(効率0.01 %)が得られた。これらはいずれもGaNを用いたIMPATTとしては世界唯一、世界トップの性能を示している。一方で、ダイオードが破壊される動作領域について,簡単な仮定の下,接合温度上昇を見積った結果,破壊時の接合温度上昇が600 ℃以上と,非常に高い発熱を伴って破壊していると推定された。放熱特性の改善により,さらなる高出力化,高効率動作が可能であることが示唆された。従って、熱対策が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイオードが破壊される動作領域について,接合温度上昇を見積った結果,破壊時の接合温度上昇が600 ℃以上と,非常に高い発熱を伴って破壊していると推定され,放熱特性の改善により,さらなる高出力化,高効率動作が可能であることが示唆された。特に現在発振に成功している18から38GHz帯から更に高周波の90GHz以上のミリ波帯での発振を実現するには、容量成分を少なくする目的でデバイス直径を狭める必要があるが、その場合直列抵抗は面積に反比例して増大し、このままでは室温での発振は不可能である。従って、熱対策が今後の最大の課題といえる。熱の発生要因は直列抵抗が高いことであり、最も大きな直列抵抗分はp層のコンタクト抵抗及びp層である。そこで、p層と金属とのコンタクト部でのコンタクト抵抗、及びp層での直列抵抗を、低い周波数で発振する大面積デバイスと同じに保つために、光電気化学エッチング、通称PECエッチングを用いて、側壁からn層のみをエッチングし、p層コンタクト及びp層全体を面積の広いまま残すことにより、同じデバイス直径で大きなp層コンタクト及びp層を有するデバイスを試作し、面積の狭いデバイスと比較し、評価する予定である。また一方で現在40GHz程度までの評価周波数を100GHz程度まで測定可能な評価システムを構築する。
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