2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of innovative magnetic materials via active site-selective substitution in hexagonal ferrites as multi-site compounds
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22H00263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 裕之 京都大学, 工学研究科, 教授 (00202218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和氣 剛 京都大学, 工学研究科, 助教 (50463906)
加藤 将樹 同志社大学, 理工学部, 教授 (90271006)
小林 寿夫 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (40250675)
酒井 宏典 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (80370401)
井原 慶彦 北海道大学, 理学研究院, 講師 (80598491)
池野 豪一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30584833)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フェライト磁石 / 六方晶フェライト / 元素置換 / サイト選択置換 / 局所異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
W型フェライトの相安定性の研究で成果があった。W型フェライトは3価のFeに加えて2価の金属イオンが必ず共存し、正規組成ではそれらの比は16:2である。2価の金属イオンが全てFe2+の場合は、その単相を合成するには酸素分圧の減圧が必要であることが知られている。しかし、Fe2+を他の金属イオン、例えばCo2+、に置換しようとすると、合成に必要な平衡酸素分圧が急激に増大し、Fe2+をCo2+に全置換するには100気圧のオーダーの酸素分圧が必要である。すなわち、低い酸素分圧下で試料を合成すると、異相が混入し単相が得られない。一方、酸素分圧が高すぎてもW相が酸化されて異相が混入する。そのふるまいの起源を熱力学的に考察した。その結果Co置換量の増大に伴う自由エネルギーのエントロピー項の発散的増大が平衡酸素分圧の急激な増大の原因であることが示唆された。すなわち、W相の単相合成には適切な酸素分圧を選択することが重要であり、2価サイトの組成を適切に設計することで適切な酸素分圧下でW相単相が得られる可能性が示唆された。 高性能フェライト磁石母材であるLa-Co置換M型フェライトに対しては、密度汎関数理論(DFT)第一原理計算を精力的に行い、各Feサイトを占有するCoの安定性に関する理解が進んだ。Coが一軸異方性に寄与する四面体配位の4f1サイトを占有するには、アルカリ土類金属元素を小さくすることでc軸方向の化学的圧縮圧力が有効であることをこれまで提唱してきた。しかし、アルカリ土類金属元素置換の効果は結晶内では一様ではなく、その非一様な歪の効果が最終的なCoサイト分布に二次的に寄与することが明らかになった。このことは、Co置換M型フェライト磁石の最終的な性能最適化の段階で意味を持つ可能性があり、この点に関してはDFT計算による予測が材料設計に有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
W型フェライト試料を様々な酸素分圧下で作製し、単相生成条件や異相の混入状況を調べることを通じてW型フェライトの相安定性の理解に顕著な進歩があった。すなわち、W型フェライトの単相試料を得るには適切な合成温度や酸素分圧の選択が必要であるが、その理由を熱力学的に説明することができた。このことは、今後、高特性の物質を探索・設計する際の1つの指導原理となり得る。 高性能フェライト磁石母材であるLa-Co置換M型フェライトに対するDFT計算を大幅に追加し、さらに、その結果、特に安定原子座標、を詳細に検討することによりCo能動的サイト選択置換法に対する理解が進展した。 核磁気共鳴法によるサイト依存局所異方性検出システムの構築は装置の開発段階にあるが、順調に推移している。 各種六方晶フェライトのFeサイトの局所的な情報を得るための手段の一つとして計画している磁場中のメスバウア分光実験に関しては、放射線源を購入に手間取って遅延したが、その他は概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
W型フェライトは含有する2価金属イオンに依存して様々なバリエーションがある。それらの熱力学的相安定性の知見を増やし、純良相の合成、および機能の最適化を目指す。 W型やM型以外に機能性材料としてよく知られた六方晶フェライトとしてY型が知られている。しかし相安定性や固有物性については未解明であるため、本研究の手法をY型にも拡張する。 現行の高性能磁石母材であるCo置換M型フェライトについては、これまでに得られた高性能化指針に則り、保磁力に加えて磁化を大幅に増やすことを目標に母相の最適組成を探索する。 様々な微視的実験手法およびDFT計算をM型以外の六方晶フェライトに拡張し、置換元素サイトの同定、およびサイト選択置換法を検討する。特に核磁気共鳴法を用いたサイト分布可視化およびサイト依存局所異方性検出システムの開発を引き続き行う。
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