2022 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファス炭素系薄膜の三次元構造不均一性と光誘起変形
Project/Area Number |
22H00267
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
青野 祐美 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80531988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 宏美 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 講師 (10610967)
寺内 正己 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30192652)
佐藤 庸平 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70455856)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 光誘起変形 / アモルファス / 窒化炭素 / 薄膜 / 化学結合状態 / 密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ある特定の条件で作られたアモルファス炭素系薄膜が、可視光エネルギーを力学的エネルギーに直接変換できる光機能性(光誘起変形能)を有することから、この材料を用いた「非接触で動作可能」「配線・バッテリー不要」「電気、磁気的なノイズに強い」光駆動アクチュエーターの開発を目指している。本研究では、光誘起変形が生じるアモルファス窒化炭素薄膜と光に応答しないアモルファス窒化炭素薄膜の三次元構造を、分光学的手法を用いて比較することで、光誘起変形に寄与する化学結合状態・ミクロ構造を特定し、研究期間後半では、その知見を生かして光駆動性能を向上させ、具体的な光駆動デバイス開発へつなげる。 1年目は、可視光下での化学結合状態変化と膜厚方向の化学結合状態均一性を調べるため、反応性高周波マグネトロンスパッタ法を用いて光応答性の異なる3種類のアモルファス窒化炭素薄膜の作製を行った。 可視光下での化学結合状態変化は、ニュースバル放射光施設において可視光照射下(明状態)と暗状態でX 線吸収端近傍微細構造分光法を用いて行った。その結果、炭素に関連するスペクトル強度が明状態において増加することが明らかとなった。 膜厚方向の化学結合状態均一性については、軟X線発光分光(SXES)法および分光エリプソメータを用いて、作製した試料の基板界面付近と自由表面側の化学結合状態および光学定数の測定を行った。その結果、基板界面に近い位置から得られた炭素に由来するSXESスペクトルと表面に近い側で得られたスペクトルに違いが見られた。さらに、窒素の含有量も界面側と表面側では異なることがわかった。分光エリプソメータの結果からは、薄膜成長初期(基板界面)と1000 nm程度の膜厚をもつ薄膜の表面では、光学定数が異なることが明らかとなった。 これらの成果を応用物理学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた膜厚方向の化学結合状態不均一性の有無については、SXES測定の結果、分布があることが明らかとなった。また、成長初期と1000 nm程度まで成長した薄膜の密度を調べるため分光エリプソメータによる光学定数の測定を行い、両者で違いがあることが明らかとなった。さらに、光誘起変形挙動のその場観察のための測定ユニットが完成し、次年度に計画している実験の準備が完了したため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、電子顕微鏡を用いて光誘起変形挙動のその場観察を行い、薄膜断面が可視光によってどのように変形するかを明らかにする。また、光誘起変形量の異なる試料について、分光エリプソメータとSXESの測定を行うことで、膜厚方向の状態不均一性に関する知見を増やし、基板の有無に限らず可視光が照射されると一方向に変形する原因を明らかにする。明状態と暗状態での光学定数の比較も行い、可視光による密度変化についても明らかにする。これらの成果をまとめ国際会議、国内学会、論文等で報告する。
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Research Products
(3 results)