2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H00283
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宮田 耕充 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (80547555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 理一郎 東北大学, 理学研究科, 教授 (00178518)
中西 勇介 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50804324)
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
竹延 大志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70343035)
劉 崢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (80333904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遷移金属カルコゲナイド / 原子細線 / インターカレーション / ファンデルワールス結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、遷移金属カルコゲナイド(TMC)原子細線束への空隙への原子・分子の挿入技術の確立、および構造・電子輸送特性の評価を中心に研究を進めた。具体的には、化学気相成長法で合成したWTe細線の束(ナノファイバー)に対し、昇華法によってIn原子のファイバー内部への挿入を試みた。実験では、シリコン基板上に合成したWTe試料と固体Inを試験管に入れ、真空中で加熱し、Inの蒸気に試料を晒した。特に、試料の加熱温度と時間を最適化することで、In原子の高い充填率と、熱処理による試料の損傷を抑制することに成功した。試料断面の走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察より、熱処理後はIn原子がWTe細線の間に充填されている様子を確認できた。STEM像とシミュレーションより、充填率が他の3元系TMCと同様に、W6Te6のユニットに対しInが2個に近い値をとることが示唆されている。In原子の挿入に伴い、細線間の距離の増加や、細線の軸回りの角度が変化することも明らかとなった。また、一本のナノファイバーに電極を作製し、電気抵抗の温度依存性を調べた。複数のInドープ細線の試料において、温度の減少とともに電気抵抗が減少する金属的な振る舞いが見られた。この結果は、第一原理計算による金属的な電子状態の予測とも一致している。構造評価に関しては、実験と理論によるラマン散乱スペクトルの解析も行った。特に、観測された複数のピークの振動数と偏光依存性に関し、理論予測の結果とほぼ一致することを確認した。また、In原子のドープ率に依存して、スペクトルが変化している様子が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、遷移金属カルコゲナイド(TMC)原子細線束について、空隙への異種原子の挿入に関する研究は順調に進んでいる。研究グループ内での実験と理論のグループの共同研究を通じて様々な構造・物性評価を行い、研究成果を論文として発表した。以上より、計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き(i)異なる集合状態を持つ原子細線の構造と電子輸送特性の相関、および(ii)原子細線束への異種原子のインターカレーションを中心に研究を進める。 (i)構造制御に関しては、化学気相成長における細線の成長起点の構造や組成に関する研究を行う。具体的には、細線の成長起点となる構造体をあらかじめ基板上に作製し、起点の構造と得られる細線の束の相関関係を調べる。 (ii)細線間の空隙への原子・分子の挿入技術の確立と構造解明に関しては、ドープ率の制御、および様々な金属原子のインターカレーションを行う。ドープ率の制御は、実績のあるIn原子を中心に処理時の温度・時間を変えながら、ラマンスペクトルの変化を調べていく。異なる原子のインターカレーションでは、比較的蒸気圧の高い金属に着目し、温度等の処理条件の最適化を進める。
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