2022 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子接合における電荷と熱の輸送機構の解明とその制御に関する研究
Project/Area Number |
22H00315
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
夛田 博一 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 亮 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
大戸 達彦 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90717761)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 熱伝導度 / 熱電変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
単分子接合の熱電度度測定のためのジグザク構造の金属細線でできたヒーターと温度センサーから構成される宙空構造を作製し、さらに駆動機構(アクチュエーター)となる金属細線を配置して、金属電極の破断と接合を繰り返し行うブレークジャンクション技術を確立した。分子を挿入する前の実験として、真空におけるナノスケールのギャップ電極の熱伝導度を計測したところ、近接場効果による熱伝導度の増大が計測された。ナノスケールの空間を挟んだ物体間においても、単純な電磁波による輻射では説明できない大きな熱伝導度が観測され、この熱輸送の近接場効果にはトンネル効果による電子の寄与やクーロン力によって結合した音響フォノンなどが関与していると考えられている。実験的には走査プローブ顕微鏡によって検証されてきたが、プローブや基板表面の清浄度が測定結果に大きく影響することが知られていた。 今年度は、宙空構造を作製し、室温で金ナノワイヤをエレクトロマイグレーションにより破断した後、電極間隔を狭めながら電気伝導度と熱伝導率を同時測定したところ、ギャップ間隔が十分に広い部分では距離に依存しない熱伝導度がみられ、熱輻射の理論値とも概ね一致した。電極が接触する直前の領域では熱伝導度の異常な上昇が観測され、どの挙動は理論予測と一致することを確認した。ナノギャップ電極の熱伝導度が安定して測定できる手法を確立するとともに、破断と接合を100回以上繰り返すことができることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定に反し、ナノギャップ電極の熱伝導度の計測を行った際に、ナノメートルの間隔を持つ金属電極間の近接場効果により、熱輸送特性が変化することが判明した。金属電極間の近接場効果の影響を検証し、近接場効果を考慮した新たな分子の架橋構造の作製を行った上で、熱伝導度を計測を行い、分子架橋構造における近接場効果の考察を追加で行う必要が生じた。微細加工技術の工夫により、電極間隔を原子レベルで制御することが可能となり、これまで理論予測のみであった、近接場効果により熱伝導度が上昇することを実験的に確認することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノギャップ電極の熱伝導度が安定して測定できる手法を確立するとともに、破断と接合を100回以上繰り返すことができることを確認できたため、分子を架橋して、その電気伝導度と熱伝導度の計測を行う。破断の際に、電極が上下方向にずれてしまい、再接合が難しくなる問題が一定の確率でおこるため、電極作製プロセスを見直し、電気メッキ法による電極作製も試みる。
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