2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間における非平衡分子捕捉過程とゲート型吸着機構の解明
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22H00324
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 亮太郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00402959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高坂 亘 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70620201)
日下 心平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80749995)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | MOF / 吸着 / 吸着熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
柔軟なMOFが示すゲート型吸着は、ゲスト分子の「気相」・「吸着相」の相変化と、ホスト骨格の「吸着構造」・「脱着構造」の変化が協同する他に例のない現象であり、学術的に興味がもたれるが、その機構は分かっていない。これはゲート現象が動的なものであるが、これまでの研究が平衡論的なものに終始していることによる。本研究課題では、非平衡状態にあるMOFナノ空間に焦点を当て、次の課題A、B、Cに取り組み、ゲート型吸着の本質に迫るものである。 A:MOFの「サイズ・形状・欠陥」と「ゲート型吸着機構」の相関の解明 B:ゲート型吸着におけるナノ空間内の界面での局所的構造変化の解明 C:ゲート型吸着におけるナノ空間内での熱移動の解明 「非平衡状態でのナノ空間における界面現象がどのようなものであるか」という問いに対する解を提示し、ゲート型吸着機構の解明を通して、ナノ空間科学における学術のブレイクスルーを図ることを目的として研究を行った。本年度は課題Aに関して、様々なサイズ、形状の2次構造を有するカゴメ型MOFをマイクロリアクターで合成手法の開発に成功した。結晶サイズは数マイクロメートルから数百マイクロメートルサイズで合成することができた。また、カゴメ型MOFのモルフォロジーは六角柱の形状であるが、a、b軸とc軸とのアスペクト比を1~10程度まで変化させて合成することができた。さらに、2次構造の異なるカゴメ型MOFの二酸化炭素等をプローブとした吸着測定を実施し、そのゲート吸着特性の違いを明らかにすることができた。本年度得た成果の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は下記の課題AおよびBを中心に研究を実施した。 課題A:MOFの「サイズ・形状・欠陥」と「ゲート型吸着機構」の相関の解明するために、200μm以下のカゴメ型MOF粒子径を精密に合成する必要がある。本年度は、マイクロ合成法を適用することにより、粒子サイズや形状の異なったカゴメ型MOFの合成に成功し、当初計画で期待した成果を得た。 課題B:ゲート型吸着は一般に吸着状態が非平衡な準安定状態になっており、界面エネルギーが構造変化の活性化エネルギーを上回ると協同的な構造変化が進行するものと推測されているが、そのプロセスは明らかでない。そのプロセスを明らかにするためには、吸着過程におけるナノ空間内の界面での構造変化の解明する必要がある。本年度は実験室X線および放射光をもちいたX線回折測定を吸着測定下で行った。当初期待していた、回折パターンが結晶サイズや形状の2次構造に依存する現象を認めることができた。また局所的な界面構造変化に関しては現在解析を行っており、今後結晶の結晶全体の構造変化に加え、局所構造変化とゲート型吸着の相関を明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り本研究では以下のA、B、Cの課題を設定し研究を遂行している。 A:MOFの「サイズ・形状・欠陥」と「ゲート型吸着機構」の相関の解明 B:ゲート型吸着におけるナノ空間内の界面での局所的構造変化の解明 C:ゲート型吸着におけるナノ空間内での熱移動の解明 今年度注力したAおよびBの課題に加え、Cの課題にも注力していく。具体的には、結晶の形状によって熱移動が変化するかについての検討を行っていく。熱移動の様子には、吸着下での熱動態を明らかにするために、in-situでの比熱測定を実施する。またMOF単結晶を用いた熱拡散率測定を、ガス吸着下で実施するための装置開発を行い、結晶方位の違いと吸着状態の違いによる熱挙動を明らかにしていく。
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