2023 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular Theory of Adhesion and Its Application
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22H00335
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉澤 一成 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (30273486)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 接着 / エポキシ樹脂 / 炭素繊維 / 量子化学 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
航空機等の先端的材料の製造にも使用される接着技術の分子論的理解を目指して、第一原理計算に基づく接着界面相互作用の理論研究を行っている。炭素材料とエポキシ樹脂の接着界面相互作用は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の強度性能を決める最も重要なファクターである。今年度、我々はグラフェンおよび酸化グラフェンとエポキシ樹脂モデルの相互作用に関して、差電子密度解析と結晶軌道ハミルトン密度解析を用いて研究した。酸化グラフェンは表面処理を行った炭素繊維のモデルにもなりうる。一方、エポキシ樹脂モデルとして、DGEBA2分子と硬化剤DDS1分子が反応したオリゴマーを採用した。これは硬化反応の初期に形成されるオリゴマーである。酸化グラフェン面上にあるヒドロキシ基やエポキシ基などの酸素含有官能基は、エポキシ樹脂の水酸基やエーテル基と水素結合を形成し、それを介した電荷移動現象が観察された。この電荷移動は接着界面相互作用を高める主な要因となる。 大気中では、アルミニウムの表面は酸化され、アルミナが形成される。γ-アルミナ(110)表面は安定面として知られており、この表面の化学吸着水によるヒドロキシ基の被覆率は前処理温度によって変化する。1000℃で加熱したこの面にヒドロキシ基はほとんど存在しないが、常温では1 nm2当たり約9個のOH基が存在する。表面ヒドロキシ基の密度が異なる4種類のアルミナ表面について、接着界面相互作用とエポキシ樹脂の接着力を調べた。ヒドロキシ基がほとんど存在しない0 OH/nm2では、配位不飽和なAl原子が存在し、これとエポキシ樹脂のOH基が配位結合を形成する。また、Alとエポキシ樹脂のカチオン-π相互作用の寄与も大きい。一方、OH基密度の大きな9 OH/nm2では、アルミナ表面とエポキシ樹脂の間の水素結合とOH-π相互作用の働きが顕著に見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
接着界面相互作用の詳細な分子論的解析を行い、接着の学理構築とその応用展開を目標とした理論研究を実施した。第一原理計算に基づいて、グラフェンおよび酸化グラフェンとエポキシ樹脂との接着相互作用の理論的研究を行った。水酸基密度の異なるアルミナ表面とエポキシ樹脂との接着界面相互作用の解析を行い、水酸基の表面密度に応じて、異なる分子間相互作用の寄与が見られることを示した。企業との連携研究に取り組み、接着技術の信頼性向上のために重要な研究手段となりうる理論研究を展開した。さらに、関連する課題として紫外光照射で接着力を制御する接着材料の理論研究を行った。グラフェンなどを用いる二次元材料のデバイス作製には、金属などの成長基板からシリコン基板やフレキシブルなプラスチック基板などに移す、「転写」プロセスが必要であり、作業時にこれが多くの問題を引き起こす。転写の際に生じる破れや汚染は、二次元材料の本来の特性を著しく低下させることから、簡便で作業者を選ばず、大面積の基板に使える転写法が求められる。紫外光(UV光)を照射すると粘着力が1/10程度に小さくなるテープ(UVテープと呼ぶ)を用いることで、高効率なグラフェンの転写を試みた。第一原理計算により、この機構の解析を行った。グラフェン表面におけるメチルメタクリレートのモノマー2個とダイマー1個の最適化構造に関して、接着力を第一原理計算から求めたところ、ダイマーの接着力はモノマーの接着力の約2/3になることが分かった。UV光で重合が進むと、接着力はさらに低下するものと予想される。以上のような発展的課題も推進したことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の接着といった難接着性材料の接着に対するニーズが高まっている。例として、poly(p-phenylene sulfide) (PPS) 部品へのエポキシ注型やエポキシモールドへのPPS二次成形等、PPSとエポキシ樹脂の組み合わせが必要な製品開発がなされている。PPSは熱可塑性樹脂で、難接着材として知られている。従来の開発プロセスでは、経験的な化学的考察を基に材料選定、工程最適化がなされている。しかしこの進め方は、実験による材料選定、工程、評価の繰り返しであり、接着界面の本質的な制御には踏み込めていない。こうした問題に対して分子論的アプローチによる接着現象の本質的な理解が求められている。PPSとエポキシ樹脂の予備的な分子動力学研究が行われているが(吉澤ら、日本接着学会誌,51(3),80 (2015))、より詳細な分子動力学機構の解析が必要である。来年度、本研究では、PPSやポリプロピレン等の難接着性の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の接着界面相互作用に関して、第一原理計算および分子動力学計算を用いた理論研究を実施する。量子論的考察に基づいて、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との接着界面の力学特性の発現機構と力学特性制御のための指導原理を見出す。
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[Journal Article] Ready-to-transfer two-dimensional materials using tunable adhesive force tapes2024
Author(s)
Nakatani, M.; Fukamachi, S.; Solis-Fernandez, P.; Honda, S.; Kawahara, K.; Tsuji, Y.: Sumiya, Y.; Kuroki, M.; Li, K.; Liu, Q.; Lin, Y.-C.; Uchida, A.; Oyama, S.; Ji, H. G.; Okada, K;. Suenaga, K.; Kawano, Y.; Yoshizawa, K.; Yasui, A.; Ago, H.
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Journal Title
Nature Electronics
Volume: 7
Pages: 119-130
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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