2023 Fiscal Year Annual Research Report
リチウム塩溶媒和物のイオンホッピング伝導を利用した革新的電解質膜の創製
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22H00340
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70438117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20432883)
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30637377)
小久保 尚 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 講師 (80397091)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 電解質 / ゲル / イオン伝導 / 電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウムイオンホッピング伝導を発現することが明らかになっているスルホランやジニトリル類に超高濃度にリチウム塩を溶解させた電解液を高分子でゲル化した電解質を作製し、これらのイオン輸送特性および物理化学特性の解析を行った。様々な官能基を有する高分子を設計・合成し、高分子とイオンの相互作用がイオン伝導メカニズムに及ぼす影響を系統的に調査した。ゲル電解質中におけるリチウムイオンの溶媒和構造をラマン分光法やNMRを用いて解析した。高分子の官能基の電子供与性が強い場合には、官能基がリチウムイオンと強く相互作用して、溶媒和構造が変化した。電子供与性が強い官能基は、リチウムイオンをトラップし、ゲル電解質中のリチウムイオン輸率が低下することが分かった。一方、官能基の電子供与性が弱い高分子をマトリックスに用いた場合には、高分子の官能基とリチウムイオンがほとんど相互作用しないため、超高濃度電解液中のリチウムイオンの溶媒和構造はゲル化後も維持され、得られたゲル電解質は超高濃度電解液と同等の高いリチウムイオン輸率を示した。また、部分フッ素化された側鎖を有する高分子をマトリックスに用いた場合、リチウムイオンとはほとんど相互作用しないが、アニオンが側鎖と相互作用することが分かった。部分フッ素化された側鎖はアニオンを引き付け、ゲル化後は超高濃度電解液よりも高いリチウムイオン輸率を示すことが明らかとなった。 また、超高濃度電解液と高分子を複合化することでイオン伝導率が大幅に低下してしまう課題があったが、これを解決するため、高分子含有量を極力低下させ、高いイオン伝導率を有するゲル電解質を開発する検討も前年度から継続して行った。良好な機械強度を有しながら、リチウムイオンと相互作用が弱い均一網目構造を有する高分子マトリックスを設計し、合成手法の確立に目途をつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い,リチウムイオン輸率の高いゲル電解質の設計・開発を進めており、リチウムイオン輸率の高いゲル電解質の設計指針を確立することができた。今後の検討すべき課題も明確になってきている。これまで検討で明らかになった課題の解決を含めて、研究分担者と共同研究を進める研究計画を立てることができているため、研究はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度までにスルホランやジニトリル類に超高濃度にリチウム塩を溶解させた電解液をゲル化させ、高分子マトリックスとリチウムイオンおよびアニオンとの相互作用に関して系統的なデータを蓄積し、高分子の官能基がゲル電解質のイオン輸送特性に及ぼす影響を明らかにすることができた。2024年度は、高いリチウムイオン輸率を有するゲルの開発を引き続き継続するとともに、リチウムイオンと相互作用が弱い均一網目構造を有する高分子マトリックスを用いて超高濃度電解液をゲル化し、高分子含有量を極力低下させて高いリチウムイオン輸率と高イオン伝導率、良好な力学強度を兼ね備えたゲル電解質の開発を進める。また、ゲル電解質中のリチウムイオン、アニオン、溶媒、高分子の相互作用がゲル電解質の電気化学特性に及ぼす影響を系統的に明らかにする。
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