2023 Fiscal Year Annual Research Report
毎秒100フレーム取得可能な高速AFMの開発と実証応用研究
Project/Area Number |
22H00405
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安藤 敏夫 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任教授 (50184320)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 高速AFM / タンパク質 / ダイナミクス / 分子プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者が開発した高速AFMは機能動作中のタンパク質分子を直接動画撮影できる唯一の顕微鏡である。すでに世界中で利用され、応用研究が急速に進展している。しかし、イメージング可能な最高速度は毎秒10画像(10fps)程度であり、この速度では捉えられない試料系、動的現象が多く存在する。装置を構成する諸デバイスを更に高速化することは、フィードバック帯域を向上させ、それによりイメージング速度を向上させるための正攻法だが、限界がある。そこで、フィードバック帯域の向上だけに頼らず、試料への低侵襲性能を更に上げることなどにより、高速AFMの最大可能なイメージング速度を従来の10倍程度(100fps)にまで上げることを目指し、本研究において以下4点の技術開発に取り組んできた。 (1)X方向の往復走査の内、往き走査時にのみ探針を試料に間欠接触させて画像取得するOTI法とゲインを自動調節可能なダイナミックPID制御法とを組み合わせることによる低侵襲性能の更なる向上、(2)カンチレバーのレーザー励振に基づく安定な質量(M値)制御法によるカンチレバーの共振周波数の向上、(3)スキャナーの高速X走査に伴って生ずるZ方向の共振振動の除去(Z方向共振の伝達関数を利用する新しい制御法による)、(4)カンチレバーメーカーとの共同研究による更に共振周波数が高く、ばね定数の小さい微小カンチレバーの作製。(1)-(3)については、期待した成果を得ることができた。(4)についてはある程度進展したが、未だ条件検討を要する。これらの開発により、試料の形状、基板上での配置、脆弱性などの条件に依存するが、X方向に配向した微小管では100fps、アクチン線維では70fpsを達成した。段差が急で、且つ、脆弱な回転軸のないF1-ATPaseを30fpsで撮影し、これまで捉えられなかった中間体を捉えることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した技術開発は順調に進展し、目標とした速度性能をほぼ達成した。
|
Strategy for Future Research Activity |
技術開発については、M値制御に用いる2階微分回路の広帯域化とカンチレバーの更なる微小化による共振周波数の一層の向上、更に微小化したカンチレバーに適した光てこ光学系の改良が残されている。これらについて開発を継続する。一方、最高100fpsの撮影速度を有する高速AFMの威力を示す応用研究を本格化する。具体的には、(i)すでに着手した回転軸のないF1-ATPase(α3β3複合体)のATPase反応に伴う構造変化、(ii)骨格筋ミオシンとアクチン線維との相互作用に伴う構造変化のイメージングに取り組む。後者については、最適なアッセイ系を構築する。これら他、随時適した試料系(例えば、揺らぎの大きな天然変性タンパク質、分子シャペロンHSP70など)のイメージングを検討する。
|