2022 Fiscal Year Annual Research Report
Sensing of volatile organic compounds by plants: Molecular mechanisms and ecological functions
Project/Area Number |
22H00425
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高林 純示 京都大学, 生態学研究センター, 名誉教授 (10197197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩尻 かおり 龍谷大学, 農学部, 教授 (10591208)
米谷 衣代 近畿大学, 農学部, 講師 (50618593)
松井 健二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90199729)
山内 靖雄 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (90283978)
村田 純 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 主席研究員 (90500794)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 植物間コミュニケーション / 構造活性相関解析 / GCaMP3高発現シロイヌナズナ / 圃場実験 / 枯草菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の匂い受容機構に関しては、トウモロコシ実生のみどりの香り受容に関する構造活性相関解析を実施した。(Z)-3-ヘキセニルアセテートと(Z)-3-ヘキセノールは効率的に受容されたが、(Z)-3-ヘキセニルアセテートのエステル基をエーテル構造にすると応答が消失した。おそらくエステルはトウモロコシ細胞内に取り込まれるとエステラーゼにより加水分解されたと考えられる。そうした解析からトウモロコシは3-ヘキセノールを構造特異的に認識していることが示唆された。また、GCaMP3高発現シロイヌナズナを導入し,一過的な細胞内Ca応答を引き起こす揮発性化合物の解析法の確立とスクリーニングを行った。揮発性植物ホルモンとして知られているサリチル酸メチルやジャスモン酸メチルの応答を基準にして,それらより強い応答を引き起こす化合物として,緑葉揮発性化合物 (GLV),傷害誘導性テルペンに加え,これまで植物に対しての効果が知られていなかった化合物がスクリーニングされた。微生物と植物の相互作用に関しては、枯草菌と非接触的に寒天培地で共培養したシロイヌナズナ幼植物は、枯草菌由来の揮発性物質(BVOC)により生長抑制を受ける。この生長抑制に伴う代謝変動を、寒天培地中に分泌された根分泌物および根組織抽出物を対象に解析した。病害、傷害、乾燥など種々のストレス条件下で蓄積量の変動が報告されているアミノ酸の含量の変動を解析した。その結果、BVOCへの暴露により根における蓄積量が増大するアミノ酸と減少するアミノ酸とを見出した。野外における植物間相互作用に関しては、トウモロコシにセイタカアワダチソウの匂いを暴露したものを圃場で栽培、調査した。暴露によって、虫害が減少し、トウモロコシ種子の糖度が増加することを認めた。また、野外における植物間コミュニケーションに関わるヤナギ植物のデータの解析を行い、論文投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究 1 植物の匂い受容機構」、「研究2 環境中の微生物起源の匂いに対するセンシング」、「研究4 発育段階に依存したセンシング力の違い」では、着実に成果が出ている。特にGCaMP3高発現シロイヌナズナによる解析で、興味深い結果が得られている。「研究3 多様な匂いが混在する環境における匂いセンシングによる防衛機能の実態」では、実験の準備および条件の検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
構造活性相関解析では、(Z)-3-ヘキセノールを鍵化合物と特定し、トウモロコシ実生を(Z)-3-ヘキセノール処理した時の応答の分子機構を詳細に明らかにする。GCaMP3高発現シロイヌナズナ実験系により,GLVの一つである2-ヘキセナール (2-HAL)が反応を起こす活性が高いことが明らかとなった。2-HALはこれまでに研究を積み重ねてきており,受容体,シグナル伝達系も明らかになってきている。これらの知見に今回明らかとなったCa応答を組み合わせ,Caシグナリングが関与する2-HAL情報伝達系についての研究目的を新たに設定した。またCa応答を引き起こすことが明らかとなった障害誘導性テルペンについて,新たな研究対象として取り入れることとした。枯草菌との相互作用に関しては、植物由来の揮発性物質(BVOC)への暴露によりアミノ酸含量が変動するとの2022年度の結果を受け、解析対象を代謝物全般に広げて、BVOC暴露時のシロイヌナズナのマーカー代謝物を探索する。一方、SIFT-MSあるいはPTR-MSを用いて、放出される枯草菌BVOCを経時的にプロファイリングし、植物の生長抑制シロイヌナズナの生長抑制度合いとの相関を解析する。野外調査では、どの成長段階で匂いを受容することがもっとも効果的なのかを明らかにする。種子~・芽生え直後~・圃場定植直後・栄養成長後~の4段階にわけて、セイタカアワダチソウの匂いを受容させ、トウモロコシの成長量・被害量・葉緑体量を調査する。また、野外における植物間コミュニケーションと野外の節足動物群集との相関に関する実験を、ヤナギを用いて開始する。また、ヤナギの遺伝子解析条件の検討を進める。
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