2023 Fiscal Year Annual Research Report
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22H00462
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| Research Institution | Tamagawa University |
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Principal Investigator |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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| Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 非ヒト霊長類 / マカクザル / 情報抽象化 / 推論 / 前頭前野 / 海馬 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
高次条件づけと抽象概念による推論という二つの情報創生のための機能が、前頭前野と海馬を含む神経回路によってどのように実現されているのかを明らかにするために、本年度は、2頭のニホンザルに対してカテゴリー学習＆推論課題のトレーニングを行った。トレーニングの過程では、よりサルの習得が容易であり、かつ、条件づけに関わる習慣的行動から推論に関わる目的志向的行動への移行を引き出すことのできるものへと課題デザインの改善を行った。昨年度までに開発した課題は、ある文脈では二つのカテゴリーの刺激がそれぞれ左ないしは右方向と結びついており、文脈が切り替わるとこの左右の関係が逆転するというものだった。修正後の課題は、ある文脈では一方のカテゴリーの刺激のみ報酬と結びついており、文脈が切り替わるとこの報酬／無報酬の関係が逆転するというものである。また、選択においては、標的を比較的長い時間（700ms）注視することで選択が行われ、その間に選択刺激の選び直しを行うことができるという形に変更した。この変更により、サルに習慣的行動を修正する余地を与え、目的志向的行動をより自然に引き出すことができるようになった。
加えて、前頭前野における創造性の基礎となる実行機能の詳細を調べるために、非対称型報酬選択課題を訓練した別の2頭のサルに対して、化学遺伝学の手法を用いて外側前頭前野の神経活動を抑制する操作を行い、多点電極を用いて操作前後の行動および神経活動の計測を行った。この課題では、報酬方向を示す手がかり刺激後の遅延の有無と妨害刺激の有無をコントロールする条件を加えた。結果、前頭前野が抑制制御に関わることが明らかとなり、この機能に関わる神経活動の変化も同定することができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、カテゴリー逆転課題の改善を図り、カテゴリーメンバーの学習と推論を用いたカテゴリーの逆転とを容易に達成することのできるデザインへと修正を行った。昨年度からトレーニングを行っていた課題では、文脈ごとに、異なるカテゴリーの刺激が左右いずれかへのサッケードと結びついており、文脈の逆転後に、前の文脈で形成された運動習慣を消去するのにいずれのサルも長い時間を要し、その状態が長期間のトレーニングによっても改善されなかった。そこで、2つの刺激（ぞれぞれのカテゴリーから1つずつ）がモニター上の4か所のうち2か所に呈示され、いずれかをサッケードによって選択するという課題へと変更を行った。サルは、文脈ごとに、報酬と結びついたいずれかのカテゴリーの刺激を選択する。選択は標的を700ms間注視することで行われ、その間に刺激の選び直しを行うことができる。これによって、サルに前の文脈で作られた習慣的行動を修正する余地を与え、目的志向的行動を自然に引き出すことができるようになった。結果として、2頭のサルへのトレーニングを迅速化することに成功し、1頭では3つの刺激ペアを用いたカテゴリー推論課題のトレーニングを完了することができ、もう1頭も最後の刺激ペアを導入する段階にまで進むことができた。すでに神経活動計測の準備は整い、海馬からの神経活動計測のプロトコルも確立しているため、課題遂行中の神経活動計測とその分析へと移行する準備が整った形となる。
加えて、前頭前野における創造性の基礎となる実行機能の詳細を調べるための科学遺伝学の実験では、2頭のサルへの神経活動操作と操作下における行動および神経活動計測を完了し、外側前頭前野が抑制機能に関係することを明らかにすることができた。この結果については、現在投稿論文を準備中である。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、カテゴリー学習＆推論課題の完了したサルに対して、外側前頭前野と海馬からの神経活動記録を行うために、記録用チャンバーを設置するための手術を行う。手術後、十分な回復期間をおいて、課題遂行中のサルから、活動電位と局所電場電位を同時に記録することのできる多点電極を用いて、外側前頭前野と海馬からの複数ニューロンの同時記録を行う。得られたデータの解析を行い、高次条件づけと抽象概念による推論という二つの情報創生機能に関する仮説の検証を行う。
続いて、十分な数の神経細胞を記録することのできたサルに対して、ウイルスベクターを用いて抑制性の化学遺伝学受容体を海馬に発現させる。そして、リガンド投与前後での行動および神経活動の記録を行う。これによって、情報創生機能に対して海馬がどのような機能を果たしているのかを因果的なレベルで明らかにする。
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