2022 Fiscal Year Annual Research Report
視野全域における光感受性網膜神経節細胞と杆体の応答を加味した五元測色学の構築
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22H00531
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡嶋 克典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60377108)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 感性情報学 / 心理物理学 / 色彩工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
3種の錐体(L,M,S)、杆体、光感受性網膜神経節細胞(メラノプシン細胞)の5つの応答量に加え、網膜位置と刺激サイズも変数とする5原色の色彩理論を構築することで、明るさ(エネルギー)効率の高い照明光の分光分布設計や5元測色値による異デバイス間の完全な色再現を実現することを目的としている。また中心視では赤系の色に見えるが周辺視では緑系の色に見えてしまう「危険な光」の発生原因について色覚メカニズムの観点から解明し、安全な光の分光強度分布を設計する手法も確立するための実験を実施した。 これまで用いてきたキセノンランプによる実験刺激呈示装置に加え、今回購入したマルチLED波長可変照明を用いた実験装置を新たに構築した。また、分光放射計とPCを組み込んだオートキャリブレーション機能を実装し、その改良を進めている。3種の錐体(L,M,S)、杆体、メラノプシン細胞の5つの応答量をそれぞれ独立に制御可能な色刺激の分光分布を生成するアルゴリズムを用いて、色刺激を自動で生成可能なシステムを開発するとともに、分光視感度を測定する装置のプロトタイプを開発した。 中心視では赤系の色に見えるが周辺視では緑系の色に見えてしまう「危険な光」に関する研究成果が、原著論文として国際オンラインジャーナルに掲載された。また中心視における刺激サイズの効果についての実験を行い、現在そのデータの解析ならびに追加実験の計画を進めている。さらにカリフォルニア大学のWerner教授らとの国際共同研究も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり新規の波長可変照明を用いた実験装置を構築した。分光放射計とPCを組み込んだオートキャリブレーション機能の実装については現在進行中である。3種の錐体(L,M,S)、杆体、メラノプシン細胞の5つの応答量をそれぞれ独立に制御可能な色刺激の分光分布を生成するアルゴリズムを用いて色刺激を自動で生成可能なシステムを開発するとともに、分光視感度を測定するシステムを開発した。 実験で得られた結果が原著論文として国際オンラインジャーナルに掲載された。また中心視における刺激サイズの効果についての実験を開始した。全体として、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、中心視における刺激サイズの効果についての追加実験ならびに定式化を進めるとともに、呈示時間の影響も含めた時空間的特性についても検討する。また、中心視におけるブラックネス(黒)と色のモード知覚におけるメラノプシン細胞の影響についても実験的に検討する。次に、主に水平方向の偏心度を変えた光刺激を用いて、カラーマッチングならびにカラースケーリング実験を実施し、周辺視における色知覚における杆体とメラノプシン細胞の影響を測定し、その結果を解析することで5原色に基づく測色学を周辺視まで拡張していく。さらに、個人の分光視感度を推定する新たな理論と手法についても検討し、5元色彩学構築に必要な色覚実験をより容易に実施するための基盤を構築していく。また、自律神経系との相互作用についても検討していきたい。
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