2022 Fiscal Year Annual Research Report
海洋酸性化が沿岸生態系の炭素隔離能(ブルーカーボン)に及ぼす影響
Project/Area Number |
22H00555
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AGOSTINI SYLVAIN 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20700107)
佐藤 雄飛 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 研究員 (50708120)
BENJAMIN HARVEY 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70785542)
大森 裕子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80613497)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / ブルーカーボン / 光合成 / 分解 / 埋没 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、ブルーカーボンにかかわるプロセス(光合成、分解、埋没)を自然の酸性化生態系において評価し、海洋酸性化がブルーカーボンに及ぼす影響を解明する。光合成に関しては、日本の式根島とイタリアのイスキア島の2か所において群集レベルの光合成測定を行ったところ、海藻藻場の群集の変化が生じても光合成生産量には影響が及ばないことが明らかとなった。高CO2環境という、植物の光合成に適した環境が広がるにもかかわらず光合成が増大しない要因としては、藻類群集の変化に伴い光合成代謝過程の異なる群集に置き換わったことがあげられる。特に、CO2濃縮機構を利用しない藻類に群集がシフトしたことで、光合成で得られたエネルギーの収支には影響が及んだ可能性があるが、光合成自体には影響が表れなかったものと考えられる。 分解に関しては、簡便な分解性の指標として熱分解性を代用できることを明らかにした。従来であれば、数か月を要する分解性の評価が1時間で完了する熱重量分析に置き換えることが可能となり、多検体の試料処理も可能となる。これは、多様な種からなる自然群集の評価において画期的な手段であり、今後、確立されたこの手法を酸性化生態系に適応し、有機物の分解性への海洋酸性化の影響評価が可能となることが期待される。 埋没については、砂泥域におけるコアサンプルの採取手法の開発に取り組んでいる。藻場周辺の堆積物の鉛直的な有機物量および組成の変化を評価し、最終的な炭素シンクへの評価手法として確立していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の酸性化生態系を利用する試みは予定通り進行しており、2022年度はイタリアおよび日本の酸性化生態系を利用した。光合成、分解、埋没といったそれぞれのプロセスへの評価が進みつつあり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
光合成の評価に関してはより広域の調査を行うために、水塊の移動を考慮した評価手法を開発していく予定である。これによって、短期間に広域の生態系の評価が可能となり、より普遍的な光合成生産量の解析が期待できる。 分解性に関しては、通常海域の藻場の有機物を対象とした実験手法を2022年に確立することに成功したことから、今後は酸性化生態系において同様の手法を適用することで、多様な生物種からなる自然生態系由来の有機物の分解性の解明が期待できる。 埋没については、砂地などにおけるコアサンプリングの手法を確立させ、酸性化生態系におけるデータ蓄積に展開していきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)