2023 Fiscal Year Annual Research Report
海洋微生物光受容の全貌解明:大規模メタゲノムで描き出す海と光のSeascape
Project/Area Number |
22H00557
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 晋 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00553108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 渉 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50545019)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | メタゲノム / 海洋微生物 / 微生物生態 / 光受容体 / ロドプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに実施されたほぼ全ての海洋メタゲノムプロジェクトを集約・再アセンブル・再解析を行い、海洋微生物を全球レベルで比較可能なデータベースを構築する。構築したデータベースを用いて、海洋微生物の持つ光受容システム(ロドプシンや光合成に関連する遺伝子)の分布を網羅的に解析する。また、メタゲノム再構築ゲノム(MAG)から、各遺伝子を持つ生物種の特定を行い、上記解析結果と統合することで、海洋微生物の持つ光受容システムを全球レベルで可視化することを目指す。
本年度は、これまでの研究で開発した世界最大の海洋微生物ゲノムカタログ「OceanDNA MAGカタログ」およびカタログ作成に用いたメタゲノムデータを用いて、光合成関連遺伝子(pufM)および微生物型ロドプシンの分布の可視化をおこなった。pufM遺伝子をコードするMAGを網羅的に探索した結果、これまでに報告の無い分類群のゲノムにもpufM遺伝子が分布することが明らかになった。また、微生物型ロドプシンに含まれるPR(プロテオロドプシン)にカロテノイド色素が結合し、光捕集アンテナとして働くことを明らかにした。また、アミノ酸配列の解析から、光受容効率を向上させる光捕集アンテナを持つ可能性のあるPRが、海洋全域に広く分布することを示し、論文として発表した。PRはこれまで、レチナールが吸収可能な光しかエネルギーに変換できないと考えられていたが、光捕集アンテナが見つかったことで、これまで考えられていた以上に太陽光をエネルギーとして受容できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋の表層環境に生息する原核生物の半数以上はロドプシンを持つと推定されている。本年度は、それらのロドプシンの一部は、光捕集を補助するカロテノイド色素と結合できることを明らかにした。上記成果を論文として発表したため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、「OceanDNA MAGカタログ」を用いて、ロドプシンおよびpufM遺伝子を保有するゲノムを対象に大規模系統解析を行い、光受容体を保有する細菌分類群を網羅的に明らかにする予定である。機能未知光受容体遺伝子が見つかった場合は、異種発現系を用いた機能解析を実施し、機能の解明を目指す。 また、ロドプシンに関しては、未知機能の探索以外にも、光捕集を補助するアンテナ色素の探索を実施する。具体的にはこれまでの研究での探索対象:H+輸送型ロドプシンだけでなく、他のイオン輸送型ロドプシンにまで拡張する。さらに2024年度は、海洋に広く分布するにも関わらず生態学的役割がほとんど分かっていない『クロロフレクサス門』に属する細菌に注目し、光受容体関連遺伝子の系統内における分布、環境中における分布の可視化を実施する。
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Research Products
(6 results)