2022 Fiscal Year Annual Research Report
有機廃棄物再生プロセスの革新に向けた複雑反応解析基盤の確立
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22H00570
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
則永 行庸 名古屋大学, 未来社会創造機構, 教授 (00312679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 一生 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任助教 (40530746)
平山 幹朗 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (50908374)
町田 洋 名古屋大学, 未来社会創造機構, 准教授 (60589422)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 反応速度論 / 反応速度モデル / 素反応シミュレーション / ガス化 |
Outline of Annual Research Achievements |
化石資源から製品を生み出す、いわゆる動脈産業に対し、役目を終えた製品を再利用・再生する静脈産業の高度化は、循環型社会を形成する上で必須である。有機廃棄物のエネルギー・物質リサイクルにおいて、ガス化による合成ガス製造を含む熱化学転換プロセスはコア技術となる。カーボンニュートラル資源である林地残材等のバイオマスを原料とし、プロセスで生成する高濃度CO2の分離回収と組み合わせれば、カーボンニュートラルを超えたネガティブカーボンエミッション技術にもなる。地球規模の課題である脱炭素化に向けては、熱化学転換の技術革新による限界までの高効率化が求められる。 しかし、多様な有機廃棄物の統一的理解に基づくプロセス設計法は、未確立であり、技術開発を阻害している。これらの熱化学反応では、何百、何万もの化学反応が並列・逐次的に進行する。従来、このような複雑反応を記述するために、複雑混合物である原料や中間生成物を物質群として認識するランピングモデルが用いられてきた。しかし、従来法は、プロセスに応じた反応特性を容易に記述できる利便性がある反面、速度因子はフィッティングによって推定されるため、汎用性がないという致命的な問題があった。 そこで、研究初年度においては、素反応データベースを活用した反応速度モデリング法による固体燃料揮発成分の反応シミュレーション手法の確立に取り組んだ。本手法の場合、気相を構成する各分子個々の濃度を入力情報として与えることができる。個々の素反応の速度因子(頻度因子、活性化エネルギー)は実験や理論的に導かれ、アジャスタブルパラメーターを一切含まず、一般性があり汎用的である。このモデリング手法を固体炭素資源のガス化反応シミュレーションに活用し、芳香族化合物やすすの生成特性を予測することに成功、Fuel誌に論文が採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度計画していた、素反応から構成される詳細化学反応速度モデルの構築を完了し、それを用いた、石炭揮発成分の気相反応シミュレーションを行い、空気吹き二段噴流床型ガス化炉のリダクタ部分での反応について検討し、すすの生成や多環芳香族化合物の生成特性の予測に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
有機廃棄物のガス化プロセスを考えた場合、ガス化に必要な熱は原料自身の燃焼によって賄われるが、より高い効率を実現するためには、原料自身の燃焼による化学エネルギー損失を可能な限り小さくする、すなわち、ガス化の低温化が必要である。しかし、低温の場合、ガス化の初期反応である熱分解過程で生成するタール(多環芳香族化合物を主成分とする重質成分)の発生を招く。タールは、ガス化炉下流の配管において凝縮・凝固し、プロセス連続運転の障害となる。化学平衡論に基づく計算(木質バイオマスの場合)によれば、700~900℃のガス化における化学エネルギー回収率(=生成ガスの化学エネルギー /原料資源の化学エネルギー)として、85~95%が達成可能である。しかし、実際には、最先端のガス化技術をもってしても70%程度にとどまり、理論値を大きく下回る。これは、タール分解に高温場を形成する必要があり、過剰に酸素を投入しているからである。理論上の化学エネルギー回収率にできるだけ近づけるためには、酸素投入はタール分解のために必要な最小限の量に抑え、酸化剤過剰供給と付随する温度過上昇を回避する必要がある。この極限までに無駄を省いたプロセス運転を実現するためには、タール等の微量成分も含む各化学種濃度の反応器内空間分布を可視化し、ガス化剤の供給量を精密に制御し、なお、最適な装置構造を設計するという、従来にはない反応設計法を確立する必要がある。そこで、今後は、有機系廃棄物の反応特性を詳細に予測できる反応速度モデルと流動・伝熱モデルを連成した解析法を確立し、これを、最適な反応器設計に活用する体系、新機軸創成に向けた学術的取り組みを進めていく。
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