2022 Fiscal Year Annual Research Report
多元素ナノ粒子を用いたドーナツ型検出器の散乱電子取り込み角検証法の確立
Project/Area Number |
22H04246
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
秋本 由佳 東京工業大学, オープンファシリティセンター, 技術職員
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 電子顕微鏡 / ADF-STEM / カメラ長 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は共用機器である複数の電子顕微鏡を管理・運用し、依頼分析等を業務として行っている。このうち、試料を透過してある角度以上に散乱した電子のみをドーナツ型の検出器で捉えて画像を構築できる電子顕微鏡を使って、その取込み角度について検証することを研究の目的とした。材料の原子番号に依存する散乱電子の取込み角度は、試料と検出器との距離(カメラ長)で決まり、そのカメラ長は任意で変えられるが、メーカーのブラックボックス部分になるため利用者に分かりにくい。直観的に理解しやすく、特定材料の分布をコントラスト強度として強調させるインパクトのある画像が得られるかは、利用者のカメラ長の選択次第である。学生を含む多くの利用者は電子顕微鏡法を専門としないため、漠然と推奨条件を利用していることが多い。原理や理論を学び検証する手段を提供し、材料解析を正しく理解し適切な結果へと導くことは、教育的意義を有すると考えられる。また、この取込み角度の条件検討を効率的に検証するため、元素の周期表の異なる周期を含むナノサイズの材料から成る標準試料を作製することも目的の一つである。 まず標準試料の作製には、軽元素から成るアルミナ粒子をベースとして用いた。アルミナ粒子に周期が異なる材料の金、銀、銅を蒸発させて付着させ、標準物質として多元素ナノ粒子を作製し、その組み合わせにより複数準備した。 カメラ長が物理的に連続して変化する装置では、散乱する電子のコントラスト変化が理解しやすい傾向があった。また、複数のレンズ系電流値を変動させてバーチャルなカメラ長として変化するタイプの装置では、コントラスト変化が理解しにくいものの、その傾向を掴むことができた。 研究期間中、各装置の度重なる不具合発生により、まだ十分な計測および検証が完了していない。今後はより詳細なデータを取得し、取込み角度の検証を行い、利用者に情報提供していきたい。
|