2022 Fiscal Year Annual Research Report
駿河湾のサクラエビ漁場に出現する深海性魚類の研究-海洋教育への活用に向けて-
Project/Area Number |
22H04254
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
冨山 晋一 東海大学, 海洋学部博物館, 博物館学芸員
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 深海性魚類 / サクラエビ漁場 / 海洋教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然史系博物館の使命の1つは、未知なる自然の解明とその成果の教育普及により、人と自然の共存を図ることである。特に地元の自然を対象とすることは、その地域の特色を社会に広く発信する上で重要である。そこで、申請者が勤める東海大学海洋学部博物館では、地先の駿河湾に関する研究と教育を続けてきた。駿河湾には国内で唯一サクラエビが多産するが、本種と同所的に出現する深海性魚類の種組成やサクラエビとの生態的な関係についての情報は少ない。本研究により新たな知見を獲得し、海洋学部博物館でその普及に取り組むことは、駿河湾特有の生態系に対する人々の理解を学術面と教育面の両方から深められる点で意義がある。 以上を背景に、本研究ではサクラエビ漁により夜間に表層付近で混獲された魚類標本の種同定と、消化管内容物の調査を行った。また、サクラエビが日中に生息する水深200~300m付近の海底で水中カメラを用いた動画の撮影を行い、サクラエビを捕食する可能性のある出現種の特定を試みた。 調査の結果、サクラエビ漁で混獲された549標本は、ハダカイワシ科やムネエソ科などを中心に45科76種に同定された。食性を調査した36種のうちサクラエビを捕食していたのはシギウナギやハダカイワシなど7種のみであった。他は、ホテイエソ科やクロシビカマス科などが魚類、小型のハダカイワシ科などが動物プランクトンを主に捕食していた。後者は、サクラエビと餌を競合あるいは本種の幼生を捕食している可能性がある。一方、海底での撮影調査では7科7種が出現した。サクラエビの捕食が知られるオオメハタが頻繁に出現したほか、ユメカサゴなど潜在的な捕食者と考えられるやや大型の種が複数確認された。サクラエビ漁にて出現が確認された深海性魚類は、タチウオを除いて、撮影調査では確認されなかった。今後、さらにデータの精度を高めて、博物館展示に反映する予定。
|