2022 Fiscal Year Annual Research Report
セントウソウに含まれる熱耐性向上物質の精製及び化学構造の決定
Project/Area Number |
22H04264
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村野 宏樹 静岡大学, 技術部, 技術職員
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セントウソウ / バイオスティミュラント |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究背景・目的】熱耐性向上剤は、新しい農業資材、バイオスティミュラントの一種である。熱波による農作物の被害を軽減させる資材として有望だが、熱耐性向上成分(Heat tolerance enhancers, HTLEs)の活性が低く作用濃度域が狭いため実用化された例は少ない。より活性が強く作用濃度域が広いHTLEsの探索が求められる。 植物が熱を感知し熱耐性が向上するまでの生理応答を熱ショック応答(HSR)と呼ぶ。サリチル酸やサンギナリン等のHTLEsはHSRを介して熱ショックタンパク質を誘導、熱耐性を向上させると考えられている。 研究代表者が所属していた研究室により確立された、HSRを定量的に評価できるHTLEsスクリーニング系(HS系)により、セントウソウ(Chamaele decumbens (Thunb.)Makino)のアセトン抽出液に強いHSR誘導活性が検出された。セントウソウが何らかのHTLEsを含むことを示唆するが、セントウソウは研究例が少ないため文献を基に活性物質を予測することは難しい。本研究は、HSRを誘導したセントウソウの化合物を分取し、その構造の検討を目的とした。 【研究方法】本学構内で採集したセントウソウを乾燥、破砕し、アセトンに浸漬して抽出液を得た。これをTLCに供し、HS系により活性画分を決定した。この画分をカラムクロマトグラフィーにより分取した。得られた活性画分をエバポレーターで濃縮後、LC/MS及びNMRによる分析を行った。 【研究成果】抽出液から得た2種類の化合物A、Bの平面構造を推定できた。両者の構造は類似していた。構造及び分子量より、それぞれC、Dという化合物の二量体であることが判明した。C、Dは天然物であった。C、DをHS系に供した結果、両者はHSR誘導活性を示した。以上に挙げた化合物は熱耐性向上剤として利用できる可能性が示唆された。
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