2022 Fiscal Year Annual Research Report
グリコペプチド感受性腸球菌菌血症に対するテイコプラニンの有効性と安全性の検証
Project/Area Number |
22H04300
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 諒 東京大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | GSEF菌血症 / テイコプラニン / 後ろ向き非劣性コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の背景・目的】Enterococcus faecium菌血症の死亡率は20-40%であり、適切な抗菌薬治療が重要である。グリコペプチド感受性Enterococcus faecium(GSEF)菌血症の治療において、テイコプラニン(TEIC)の有効性に関するエビデンスは限られている。本研究では、GSEF菌血症の治療において、TEICの有効性と安全性をバンコマイシン(VCM)と比較して評価することを目的とした。 【研究計画・方法】本研究は傾向スコアを用いた後ろ向き非劣性コホート研究である。2009年から2021年の間にGSEF菌血症を発症し、TEICとVCMのいずれかを投与された18歳以上の患者を対象とした。有効性に関する主要評価項目は治療終了時の臨床的成功であり、薬剤選択の傾向スコアを共変量とした一般化線形モデルを用いて評価した。非劣性マージンは、臨床的成功の絶対差20%を用いた。安全性評価項目は急性腎障害(AKI)の発生割合であり、多変量ロジスティック回帰を用いて評価した。 【研究成果】合計164名の患者(TEIC群74名、VCM群90名)が対象となった。TEIC群とVCM群でそれぞれ64.9%(48/74)および48.9%(44/90)の患者が主要評価項目を達成した。調整後の有効性の差は9.9%(95%CI、-0.9%~20.0%、P = 0.07)で、TEICはVCMに対して非劣性であることが示された。AKIの発生割合は、TEIC群で8.1%(6/74)、VCM群で24.4%(22/90)、調整後のオッズ比は0.242(95%CI, 0.068 to 0.864; P = 0.029)であり、VCM群よりもTEIC群でAKIリスクが有意に低かった。結論として、TEICはGSEF菌血症の治療薬として、安全かつ有用な代替治療薬であることが明らかとなった。
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