2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22H04343
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Research Institution | St. Luke's International University |
Principal Investigator |
牛草 健 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医師
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トリプルネガティブ乳癌 / アポクリン癌 / 癌化学療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者の所属医療機関で2010年から2017年の7年間にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対して手術治療を受けた方のうち, 術前化学療法(NAC)を受けた97症例が本研究の対象症例となった. 手術検体で組織学的にNACの治療効果判定を行ったところ, 36例で浸潤癌が消失(pCR)しており, 61例で浸潤癌の残存があった. 97例の術前生検の組織を見直し, 腫瘍浸潤リンパ球(TILs), HE染色でのアポクリン分化とそれに有用性が報告されているAR, 15-PGDH, ACSM1の免疫組織化学の染色性などを評価した. HE染色でアポクリン分化を示した6例のTNBCのうち5例(83%)で15-PGDHとACSM1が陽性となり, 非アポクリン分化症例は99%で陰性であった. 15-PGDHとACSM1は感度・特異度共に高いアポクリンマーカーであることが示唆された. これら5例にはAR陽性かつTILs低値(<50%)の組み合わせが共通し, さらに全例で癌(非浸潤癌含む)の残存があった. 多変量解析によりNACの治療効果の予測因子を検索したところ, AR陽性かつTILs低値の組み合わせは有意な効果不良因子であった. この組み合わせは既報でNAC治療効果不良だが予後良好と報告されたトリプルネガティブアポクリン癌(TNAC)のプロファイルに共通していた. また予後因子を多変量解析で検索したところ, pCRおよびTILs高値(≧50%)が有意な予後良好因子であった. これらはTNBCで報告が多く, よく知られた予後因子である. 本研究によりTNBCのアポクリン分化に関連した病理組織学的因子がNACの反応性を予測する可能性が示された. 本研究により, 将来的にTNBCに対するNACの治療方針の改善やアポクリン分化を標的とした新規治療薬の開発へつながることが期待される.
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