2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌叢がクモ膜下出血後の遅発性脳虚血に与える影響
Project/Area Number |
22H04349
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
松川 東俊 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤医師
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / くも膜下出血 / 遅発性脳虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血 (SAH) は、予後不良疾患である。その主因は遅発性脳虚血 (DCI) と呼ばれる病態で脳血管攣縮など様々な機序が関与し、根本的治療法・予防法は存在しない。近年、腸管と中枢神経系の双方向性信号伝達を指す腸脳連関なる概念が提唱され、腸内細菌叢が深く関与する。SAH 後の DCI 発症にも腸内細菌叢が関与すると推測し、SAH マウスモデルを用い、DCI に対して腸内細菌叢が関与する機序を明らかにし、DCI における腸脳連関の解明を目指す事を目的とした。 方法:SAH マウスモデルに対し抗生剤を投与し、腸内細菌叢を変容させた。SAH の有無、腸内細菌叢変容の有無に応じて4群に分類し、ⅰ. SAH 血腫量、ⅱ. 体重、ⅲ. 血中サイトカイン網羅的解析、ⅳ. 病理組織学的解析、ⅴ. 神経機能、を評価した。 結果:各群6匹、合計24匹のマウスを用いた。抗生剤投与による ⅰ. SAH 血腫量に変化は認めなかった。腸内細菌叢変容 SAH マウス群で、ⅱ. SAH 発症3日後の体重低値、ⅲ. CCL5/RANTES 高値、ⅳ. 脳血管攣縮が高度、活性化マイクログリア集積数が高値、ⅴ. 神経学的機能スコアが低値、であった。 結語:抗生剤投与による腸内細菌叢の変容が、活性化マイクログリアを介する脳実質内炎症や DCI の一病態である脳血管攣縮を増悪させ、神経学的機能を低下させることが示された。今後は、マウス糞便から細菌由来ゲノム DNAを抽出し、PCR 法にて 16S rRNA 遺伝子発現領域を増幅し、これを次世代シークエンサーを用いた微生物層解析に供することで腸内細菌叢解析を行う。さらに、DCI に予防的に作用するとされる miR-15a、miR-24、HMOX1などの核酸発現解析、腸管の組織学的評価などを行い、さらなる病態生理の探究を行う予定である。
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