2022 Fiscal Year Annual Research Report
熱分解反応を利用した違法薬物の位置異性体識別法の開発
Project/Area Number |
22H04400
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Research Institution | 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所 |
Principal Investigator |
内川 貴志 佐賀県警察本部刑事部科学捜査研究所, 警察職員
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱分解 / 異性体識別 / フルオロフェニル基 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】フルオロフェニル基を有するカチノン類薬物は、違法薬物として規制対象であるが、オルト位にフッ素が結合する薬物には、容易に熱分解反応を起こし分解物に変化するものが多い。中でも2F-α-PVPや同様の構造を有する薬物は、熱分解対策として有効な誘導体化処理も不可能であり、我々が以前より違法薬物の識別に対する有効性を報告しているガスクロマトグラフ赤外分光光度計を活用した異性体識別法では正確な結果を得ることは困難である。更には、一般的な非加熱分析であるLC-MSでも、質量分析の異性体識別能力が低いことから識別は困難である。そこで我々は、これらの薬物の熱分解し易い性質に着目し、分析前にあえて加熱し、熱分解を生じさせた後に各種分析を実施することで検査対象薬物の異性体識別の可能性について検討を行った。 【研究方法】オルト、メタ、パラの3種類の異性体が揃ったフルオロフェニル基を有するカチノン類薬物(例:2,3,4F-α-PVP)を複数用意し、各薬物を遊離塩基状態のトルエン溶液とした後に110℃で数時間加熱し、熱分解反応を起こさせた。その後、LC-MS、GC-MS等で分析し、加熱後の各薬物の変化を検証した。 【研究成果】2F体は、遊離塩基状態で加熱すると熱分解反応を起こし、LC-MSにおいてマススペクトル上で-HFに相当する質量数の減少が観測されたが、3F体及び4F体では、熱分解反応は起きなかった。更に、加熱処理後の2F体のみから蛍光特性が観察された。以上のことから、熱分解反応を利用することで、2F-α-PVPのような熱分解の影響を受け易いフルオロフェニル基を有するカチノン類薬物の正確な識別が可能であることが判明した。
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