2022 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄小脳変性症における姿勢振戦を利用したリハビリテーション治療の探索と開発
Project/Area Number |
22H04410
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
井上 航平 大分大学, 医学部, 理学療法士
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / 姿勢振戦 / バランス機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄小脳変性症 (以下,SCD)患者に対してバランスや歩行など 理学療法を集中的に行うと,短期的にも長期的にもSARAが改善することが明らかになっている.しかしながら,そのバランス訓練の内容は画一的なものであり,病型や重症度によって多様な病態・障害像を呈するSCDを加味した内容とは言えない. そこで今回,SCDに対する個々に適した理学療法の確立を探索すべく,姿勢振戦に着目した.小脳性運動失調患者では,健常者と比較し,特異的に約3Hzの姿勢振戦が生じることが報告されている.しかし,その現象の意味合いは不明であり,さらに経時的な変化をみた報告はない.そこで本研究では,理学療法前後の姿勢振戦を比較し,理学療法の効果と姿勢振戦の関連を明らかにすることを目的とした. 症例は脊髄小脳変性症 (SCA3)に対する2週間のヒルトニン投薬目的で入院となった70歳台後半の男性である.入院時および退 院時にICARS,SPPB,姿勢振戦を測定した.姿勢振戦はアニマ社の重心動揺計(バランスコーダBW-6000)を使用した.測定は開眼時の30秒間の開脚静止立位とした.解析はパワースペクトル解析を行い,最大エントロピー法を使用した.また,算出したパラメータを周波数正規化を行った.理学療法はバランス練習を中心とし週5回,1回 40分実施した. 結果として,理学療法前後でICARS (10点→8点)およびBBS (49点→55点)と 改善を認めた.一方で,3Hz前後の姿勢振戦のピーク値 (37.19 →47.66)および総和 (59.04→64.55)は著名な変化は認めなかった. SCA3のバランス機能改善は,小脳領域ではなく関連領域の賦活による影響が大きい可能性が示唆された.
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