2022 Fiscal Year Annual Research Report
Physics of strongly-correlated topological spin-triplet superconductivity with uranium atom
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22H04933
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 大 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30359541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 憲二 京都大学, 理学研究科, 教授 (90243196)
徳永 陽 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, リーダー (00354902)
木俣 基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20462517)
柳瀬 陽一 京都大学, 理学研究科, 教授 (70332575)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Keywords | 超伝導 / スピン三重項 / 強相関 / トポロジー / ウラン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「強相関電子系におけるトポロジカル超伝導体は存在するのか」そしてもし存在するのであれば「どのような量子状態で実現するのか」という学術的「問い」をもとに、研究目的として、トポロジカルスピン三重項超伝導状態の確立を目指すことを掲げている。対象物質としてウラン化合物を中心とした強相関量子物質を取り上げ、実験と理論が密接に強調しながら研究を進める予定である。より具体的には、UTe2や強磁性超伝導体において、高圧、強磁場下の磁気的性質と超伝導発現機構の解明、UTe2の多重超伝導相の秩序変数の決定、トポロジカルエッジ伝導の検出、トポロジカルスピン三重項超伝導体の新物質開発、UTe2のフェルミオロジーなどをターゲットとする。 当該年度に得られた研究成果として、顕著なものとしてまず、UTe2におけるフェルミ面の初めての観測が挙げられる。NaCl/KClの塩フラックスを用いたUTe2の単結晶育成を行い、世界最高純度の単結晶を得ることに成功した。この純良単結晶を用いて量子振動効果(ドハース・ファンアルフェン効果)の実験を、極低温・強磁場下で行い、初めて量子振動の観測に成功した。検出したフェルミ面は二種類のシリンダー状フェルミ面であり、32-57m0と極めて大きい有効質量を検出した。5f電子の関与した重い準粒子がフェルミ面を形成していることを明らかにした。5f遍歴電子モデルにクーロン相互作用Uを取り入れたバンド計算と良い一致を示しており、実験と理論の両側からUTe2の電子状態を微視的な観点から明らかすることができた。この実験結果のインパクトは大きく、英国や米国の他のグループでも追試が行われ、実験結果の正しさが確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階で、UTe2の量子振動観測によるフェルミ面の決定を挙げていたが、当初の目標通り成果が得られた。量子振動の観測には、純良単結晶が必要不可欠である。塩フラックス法による単結晶育成技術が開発されたことで、UTe2の純良性が劇的に向上した。このような劇的な試料純度の向上は、当初予期していなかったことであり、まさに「ゲームチェンジャー」である。これにより、重い準粒子が形成するフェルミ面の直接観測に成功し、UTe2の電子状態を解明することができた。これは、当初のトポロジカルスピン三重項超伝導状態を解明する、という研究目的と照らし合わせてみても、重要な成果としての第一歩である。フェルミ面観測のみならず、超伝導対称性や秩序変数決定にとって、純良単結晶が安定して得られるようになったことは、きわめて大きな意義を持つ。実際、そのような実験結果や理論結果が得られつつある。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
UTe2の純良単結晶が得られるようになったことで、今後、超伝導対称性や秩序変数の決定などの研究をさらに進める。強磁場、極低温、高圧の極限環境下における精密物性測定が鍵となる。とくに125Teを使って、エンリッチした純良単結晶を用いてNMRの実験をすすめる。また、FIB微細加工装置が導入されたので、これをもちいたトポロジカルエッジ伝導の検出を試みる。まずは純良な微小試料における結晶軸方向に依存した電気抵抗測定からはじめて、非相反伝導(抵抗)測定などを試みる。非相反抵抗とは、正と負の電流に対する抵抗の差分を取った抵抗成分である。試料エッジを逆向きに周回するアップスピンチャンネルとダウンスピンチャンネルが、磁場または自発磁化の存在により非等価な場合にエッジ抵抗の差分が有限となる。また左右のエッジにおいて非相反抵抗の符号反転を観測することも試料を周回するエッジ状態の証拠となる。 FIB加工した試料で問題となるのは、測定のためのリード線の接触抵抗を抑えること、そして微小試料にかかる歪をいかに抑えるかという点である。すでにCeRh2Si2やUBe13などで試験的に電気抵抗測定やホール効果測定を行うなど予備実験を進めており、今後もこの方針で研究を継続する。
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