2022 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering study of excited charmed baryons using high-momentum pion beams
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22H04940
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野海 博之 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10222192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成木 恵 京都大学, 理学研究科, 教授 (00415259)
佐久間 史典 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (10455347)
本多 良太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30748877)
瀧澤 誠 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (90297044)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Keywords | チャームバリオン / チャームクォーク / ヘビークォーク / ダイクォーク / RICH |
Outline of Annual Research Achievements |
・大型飛跡検出器の開発:散乱粒子の多重度に対する検出効率を強化するために前方に散乱した粒子を広い面積(2.7mx1.8m)で検出する飛跡検出器を導入する予定であったが、ワイヤー張力による筐体の歪みが想定を超えて大きくなることが判明し、飛跡検出性能への影響を最小限にするために設計をやり直した。 ・粒子識別検出器の開発:設計に基づいて、大型ミラーの1ピース(0.95mx1.08m)を用いたリングイメージ検出器(RICH)を製作した。電子ビームによる性能評価を実施した。所期の性能が確認できた。 ・データ収集システムの開発:ハードウエアトリガを排除したストリーミングタイプの高速データ収集システムの開発を進めた。開発したシステムを、RCNPの実験において導入、実装を行った。とくに、不要な情報をフィルターして記録すべきデータを選別するソフトウエアの導入に不可欠なイベントビルダープロセスの導入が図られた。一方、これまで開発した検出器(ファイバートラッカーやドリフトチェンバーほか)を集結し、検出器を組み合わせた試験やデータ収集システムの開発に利用できるテストベンチをJ-PARC K1.8BR実験エリアに構築した。 ・理論研究の推進:本研究で解明を目指すダイクォーク相関やチャームバリオンのみならず、ストレンジクォークを複数含むΞバリオンやΩバリオンなどバリオン内部のクォーク相関の性質や関連するスピン依存力の起源および高密度クォーク物質におけるクォーク対凝縮との関連など、背景にある強い相互作用の非摂動的領域における物理について、格子QCDや有効理論の専門家および実験家を集め、コミュニティーにも開かれた議論を行う場として、ハドロンセミナーを立ち上げた。2022年度は9回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で導入する大型飛跡検出器(LDC)の製造について、詳細設計の段階で、ワイヤー張力によって筐体が予想を超えて大きくゆがむことが判明し、その影響を最小限に抑えるために、実験シミュレーションによる影響を考慮しつつ、筐体設計をみなおした。このため、導入に、当初予定より 1 年の遅れが見込まれている。LDCの導入については、研究期間の中でも先行して進める予定になっていたことで、2024 年度までに導入できれば遅れは取り戻せる見込みであること、2) 粒子識別装置については、分割試作機による性能評価が予定通りに行われ所期の性能を示していること、3) 連続読出し型データ収集システムの開発についても、RCNPでの実験への実装が実現したこと、J-PARCに構築したテストベンチによってより実践的な環境でデータ収集システム開発の加速が期待できること、などから、これまで整えた検出器を含めて、本課題推進のコア装置である大型スペクトロメータの整備は着々と進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・大型飛跡検出器の開発:散乱粒子の多重度に対する検出効率を強化するために前方に散乱した粒子を広い面積(2.7mx1.8m)で検出する飛跡検出器について、ワイヤー張力による歪みの影響を最小限にした筐体設計に基づき、製作に取り掛かる。 ・粒子識別検出器の開発:大型ミラーの1ピース(0.95mx1.08m)を用いたリングイメージ検出器(RICH)の性能評価に基づいて、実機制作に向けて開発を進める。チェレンコフ光を検出する光センサーと輻射体に用いるエアロゲルを追加調達し、受光面積と光量の増加を図る。 ・データ収集システムの開発:本実験研究はハードウエアトリガを排除したストリーミングタイプの高速データ収集システムの開発を進める。これまでに開発した検出器(ファイバートラッカーやドリフトチェンバーほか)を集結して構築したテストベンチを使って、ビーム等を用いてデータ収集を行う。収集したデータを再生し、不要な情報をフィルターして記録すべきデータを選別するソフトウエアの開発を進める。 ・理論研究の推進:チャームバリオンのみならず、ストレンジクォークを複数含むΞバリオンやΩバリオンなどバリオン内部のクォーク相関の性質や関連するスピン依存力の起源および高密度クォーク物質におけるクォーク対凝縮との関連など、背景にある強い相互作用の非摂動的領域における物理について、格子QCDや有効理論の専門家および実験家を集め、コミュニティーにも開かれた議論を行う場として立ち上げたハドロンセミナーシリーズを今後も継続する。チャームバリオン励起状態の生成機構に関する理論的枠組みを検討する。ストレンジバリオン生成データを指標に用いつつ、理論的記述の確立を目指す。バリオン内のクォーク相関が励起エネルギー、生成率や崩壊分岐比に及ぼす影響について理論的解析を進める。
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Research Products
(62 results)