2022 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring molecular science by atomic-scale spectroscopy
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22H04967
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金 有洙 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (50373296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 上級研究員 (80586917)
数間 恵弥子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50633864)
今井 みやび 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (50845815)
木村 謙介 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70856773)
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Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 光SPM / 単一分子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目①~⑤の各実績の概要は以下の通りであり、全体的を通して順調に研究が進行している。 研究項目①:光学系と組み合わせた走査トンネル顕微鏡(STM)と非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)の複合装置の立ち上げを行った。これまでに実績のあるSTMを用いた単一分子の電界発光の計測に成功し、単一分子レベルでの光学計測が実施できるまで装置の状態を整えることができた。またNC-AFMの機能に関しても、q-plusセンサを用いて力シグナルの検出とAFM像の取得に成功した。 研究項目②:1分子内で選択的な解離反応が可能な分子系の探索を行った。C-HとC=Oの選択的解離を目的とし、2つの結合を含む3種類の分子を金属単結晶表面に吸着させSTMにより観察したところ、複数の吸着構造をもつだけでなく複数の分子から成る集合体が観察され、反応解析には適さないと判断した。 研究項目③:光STMとエレクトロスプレー蒸着機構(ESD)を組み合わせた装置の立ち上げを行った。本装置では、大気中で生成された試料分子液滴を4段階の差動排気チャンバーを介して超高真空チャンバー内の基板へ蒸着する。装置の性能確認のため、オリゴチオフェン分子のESD蒸着を行い、蒸着後の不純物量は少なく十分な精度でSTM観測が可能であることを確認した。 研究項目④:光AFM測定の前段階として、既存の光STMを用いてドナー分子とアクセプタ分子の蒸着を行い、それぞれの分子の構造観測と電子状態計測を行った。さらにドナー分子の単一分子発光、及び光電流計測を行い、励起状態の構造を明らかにした。 研究項目⑤:テラヘルツ(THz)光パルスと光STMを組み合わせたTHz-光STMを単一分子系に適用し、単一分子からの電界発光計測に世界で初めて成功した。また、同じ装置で単一分子のフォトルミネッセンス測定も成功し、可視光とTHz光を同時にSTMに導入できる準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目①:ナノ光学と原子間力顕微鏡(AFM)の機能を組み合わせた光AFM技術を開発することを目指している。これまでに光学系と組み合わせた走査トンネル顕微鏡(STM)と非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)の複合装置の立ち上げを行った。光STMとNC-AFMを別々に動作させることに成功したので、今後これらを組み合わせて機能させることを試みる段階であり、順調に進んでいる。 研究項目②:一分子内で選択的な解離反応が可能な分子系の探索を行った。計画していた2つの結合を含む分子群について、3種類の分子の吸着構造を観察し詳細に解析したが、当初の予想に反し複雑な吸着構造を形成し、反応解析には適さないと判断した。本検討により、今後検討対象とする分子群の絞り込みができた。 研究項目③:ESDと光STMの融合装置の開発を行った。また、テスト分子としてオリゴチオフェン分子のESD蒸着を行ったところ、高い純度での試料作製が可能であることが明らかとなった。STM観測によって、立体異性体の判別や分子軌道の可視化にも成功した。当初の計画よりも順調に進んでいる。 研究項目④:ドナー分子とアクセプタ分子それぞれの試料作製条件を突き止め、単一分子スケールで伝導特性を明らかにした。さらにドナー分子の励起構造の解明も完了し、当初の予定以上に進捗している。研究項目①のAFMの立ち上げも進んでいるため、今後は両分子間で生じる光誘起電子移動を力のシグナルとして検出することに挑戦する。 研究項目⑤:テラヘルツ(THz)光パルスと光STMを組み合わせたTHz-光STMを単一分子系に適用し、単一分子からの電界発光計測に世界で初めて成功するという重要な成果を挙げた。また、同じ装置で単一分子のフォトルミネッセンス測定も成功し、当初の予定より順調に実験装置開発が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、①光STMにNC-AFMの機能を導入して構造解析と物性評価を高精度化し、②単一化学結合レベルでの反応制御、③生体色素分子における構造と物性の相関解明、④2分子間電荷分離の直接計測、⑤超高速駆動の単一分子単一光子源の実証といった発展的な研究項目を実施することで物質科学のフロンティアを広げ、幅広い分野へ波及する未踏研究領域の基礎学理を確立する。これらの計画を実現するために今年度は以下の内容を実施する。 研究項目①:新規立ち上げを行い別々に動作確認を済ませた光STMとNC-AFMを組み合わせて、光AFMとして立ち上げる。また、AFMによる絶縁体表面の原子スケール観測を目指す。 研究項目②:前年度に検討対象とした分子が非常に複雑な吸着構造をもち反応解析には適さないと判断した。今年度は分子を変更し、引き続き単一結合レベル化学反応として結合選択的な反応の探索を行い、吸着分子の構造解析ならびに反応挙動の解析を行う。さらに、単一結合レベル化学反応を行うための酸化物表面基板の作成条件の最適化と評価を引き続き行う。 研究項目③:オリゴチオフェン分子を用いてESD法のテスト蒸着を行ったので、本研究提案の対象である生体分子の蒸着に挑戦し、STMによる単一分子計測を実現する。 研究項目④:ドナー・アクセプター分子を用いた試料作成条件は最適化したので、AFM装置で観察を行い、両分子間で生じる光誘起電子移動を力のシグナルとして検出することに挑戦する。 研究項目⑤: 光STM装置にTHz光パルスとCWレーザーを別々に入れて実験を行うところまでは進んでいる。これらを同時に入れられるように光学系を改築し、THz電場によるフォトルミネッセンス信号の変調を試みる。
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[Presentation] Orbital-resolved visualization of single-molecule photocurrent channels2022
Author(s)
Miyabi Imai-Imada, Hiroshi Imada, Kuniyuki Miwa, Yusuke Tanaka, Kensuke Kimura, Inhae Zoh, Rafael Jaculbia, Hiroko Yoshino, Atsuya Muranaka, Masanobu Uchiyama, Yousoo Kim
Organizer
The 22nd International Vacuum Congress IVC-22
Int'l Joint Research
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