2022 Fiscal Year Annual Research Report
Organic chemistry using water: development of aqua-organic chemistry
Project/Area Number |
22H04972
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50195781)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北之園 拓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50755981)
山下 恭弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90334341)
|
Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
|
Keywords | 反応有機化学 / 水溶媒 / ルイス酸触媒 / 塩基触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機溶媒は排出される化学系廃棄物の8割以上を占めるとされ、また反応後の混合物から溶媒を除去する蒸溜操作のエネルギー消費が課題とされ、蒸溜に由来するCO2排出量は化学産業のCO2排出量の4割に上る。溶媒と触媒の両方を回収・再使用することは、工程が簡略化されるため理想的な方法であるものの、溶媒と生成物の分離法を見出す必要があった。特に反応混合物中に残留する不純物によって、触媒が不可逆的に失活してしまうため、不純物の蓄積を避けることが課題であった。殊に、精密有機合成で広く用いられる高活性キラルルイス酸触媒は、このような不純物の影響を受け易く、医薬品や化成品などの製造過程においてこれらを用いる合成プロセスを採用する際の足枷となっていた。そこで有機溶媒も界面活性剤も使わない有機合成アクアケミストリーに着目し、触媒の固定化(不溶化)技術と組み合わせて、触媒と溶媒双方が繰り返し使用可能な不斉合成を目指した。有機溶媒ではなく水を用いると、原料の有機化合物は混和しないため、反応後に抽出操作や遠心分離操作で生成物を容易に単離することができる。また、高活性なアクア錯体を疎水的な高分子内に適切に区画化することで、高活性状態の保持を図ることができる。このような仮説の下、キラルスカンジウム錯体をポリスチレン骨格に固定化し、遠心分離操作のみで生成物、触媒、水を分離可能にした。メソエポキシドの不斉開環反応では触媒と水を10回再使用することができ、多くの医薬品に見られるキラル1,2-アミノアルコールを効率的に得ることに成功した。また、チオールの不斉1,4-付加反応、ホルマリンを用いる不斉向山アルドール反応にも応用することができた。また、選択性に改善の余地があるものの、3種類の固体を水中で混ぜ合わせることで高効率な不斉触媒となる事例を見出した。有機溶媒中、また無溶媒条件では一切反応は進行しなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまで代表者らが開発してきた水中でも機能するルイス酸触媒を反応媒体として用いた水ごと回収・再使用するための触媒系設計に成功し、論文として纏めた。これまでの研究の知見を存分に活用した成果である。また、「不溶」ながらも水中で特異な反応性を示す反応開発についてもポリマー状であるγ-塩化パラジウムとポリスチレンスルホン酸ナトリウム、非水溶性の不斉配位子を水中で攪拌して得られる複合体が反応を進行させることを見出し、論文発表を行った。有機溶媒中での混合は全く触媒活性を示さず、固体同士の水中撹拌について新たな知見を提示することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、5つのサブテーマについて相互連携の下、並列して推進する。水中での特異な反応性を見出すべく、ナノチューブ、界面活性剤一体型触媒、酸化物、水酸化物などの不溶性金属塩を軸に多様な分子変換を試みる。また、これらの特異性の理解を深めるべく、各種測定、計算化学、多変数解析などの活用を図りたい。また生体反応への応用を見据え、水溶性基質に対するアプローチに対しても知見を得たい。
|
Research Products
(13 results)