2023 Fiscal Year Annual Research Report
Dissecting mechanisms of functional cell death "corneoptosis" and stratum corneum homeostasis regulated by pH and its clinical application
Project/Area Number |
22H04994
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90212563)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 毅 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (10452442)
福田 桂太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (60464848)
|
Project Period (FY) |
2022-04-27 – 2027-03-31
|
Keywords | 角層pH三層構造 / 角層pHライブイメージング / コルネオトーシス / 皮膚微生物叢 / 環境適応層 / 黄色ブドウ球菌 / カリクレイン / 落屑 |
Outline of Annual Research Achievements |
角層pHのライブイメージング解析により、角層のpHは、角層下層で弱酸性(pH 6.0)、角層中層で酸性(pH 5.4)、角層上層で中性(pH 6.7)と段階的に変化し、体の部位によらず、あらゆる角層で角層pH三層構造が維持されていることを明らかにした。また、角層下層のpHはコルネオトーシスの酸性化に由来し、角化細胞は死んだ後も分化して、酸性を呈する角層中層、中性を呈する角層上層を形成することも明らかにした。 タイトジャンクション(TJ)の構成分子であるClaudin-1の表皮特異的KOマウスの角層pHを観察したところ、角層pH三層構造は消失し、角層全体が中性化していた。角層pH三層構造の形成はTJに依存することが示唆された。また、角層に異なるpHの溶液を塗布した後、角層pHを観察した結果、角層上層は、外部の環境に応じてpHを変化させる「環境適応層」であることがわかった。さらに、無菌マウスの角層pHを観察したところ、中性を呈する角層上層は消失していた。しかし、無菌マウスとSPFマウスと同居させると、1週間後には無菌マウスでも中性を呈する角層上層を認めた。角層上層は、皮膚細菌叢により中性を呈することが示唆された。 続いて、角層とS.aureusのライブイメージング解析を行った。酸性を呈する角層中層は、黄色ブドウ球菌の侵入を阻止するバリアとして機能することを示した。最後に、角層の剥離に関わるタンパク分解酵素であるカリクレイン(KLK)とKLKのインヒビターであるLEKTIの動態、そして角層pHイメージングマウスの角層内pH分布を加味した数理モデルを構築し、角層内のKLKの酵素活性を算出した。その結果、角層pH三層構造は、角層が一定の厚みを保つために皮膚表面でのみ落屑を起こすのに適した構造であることがわかった。角層は角層pH三層構造を形成し、角層恒常性を維持することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コルネオトーシスの起動はタイトジャンクション(TJ)が移り変わるタイミングで起こることが明らかにされ(未発表)、さらに、角層が段階的に3層のpH層を有し、それぞれのpH層の生物学的意義を解明することができた(Fukuda K et al. Nat Commun. In press)。 現在、角層pH恒常性維持機構に関わる分子を同定するため、2つのアプローチをとっている。1つは、角層pH三層構造の形成が障害されていることが予想される先天性魚鱗癬モデルマウスの作製とそのマウスの角層pH解析である。これらのマウスの作製は、最終段階に来ており、2024年度に完成する見込みが高い。もう1つのアプローチが網羅的脂質解析であるノンターゲットリピドミクス解析により、角層上・中・下層のそれぞれの層で特異的に高発現している脂質を同定し、その脂質の角層pH恒常性維持機構への関与を解析する方法である。具体的には、ノンターゲットリピドミクス解析で浮上した候補脂質の合成に関わる酵素を表皮モザイク遺伝子破壊法用いて、マウスの皮膚で欠損させ、角層pHの評価を行う。 我々は、ヒト皮膚をNSGマウスに植皮して、生着した皮膚にpHプローブやTJ、Ca2+のプローブを導入することで、ヒト皮膚において角層pH三層構造が形成されているか、コルネオトーシスがマウスで観察されていると同様に起きているかの検証ができる状態にある。このように、角層pH恒常性維持機構の解明に必要な研究の準備が着実に進んでおり、同様のアプローチでコルネオトーシスの分子メカニズムを明らかにして行く予定である。 角層pHと皮膚微生物叢の制御による治療法の開発に関しても、角層pHと皮膚微生物叢のdualライブイメージングが計画通り進んでいる。現在、S.aureus やS.epidermidisが角層pH三層構造とどのように相互作用するか解析している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. ヒト皮膚における角層pH三層構造の形成、コルネオトーシス現象の検証:NSGマウスに健常人皮膚を植皮し、角層pH三層構造形成の観察のためにpHプローブ、 コルネオトーシス現象の検証のために、細胞内Ca2+ プローブやタイトジャンクションのプローブが入ったプラスミドを植皮部に導入する。そして、共焦点顕微鏡で角層pH三層構造の形成、コルネオトーシス過程がマウスと同様に起きているか検証する。 2. 角層pH制御機構に関わる脂質の同定:角層上・中・下層で高発現している脂質を同定するため、野生型および先天性魚鱗癬角層pHイメージングマウスの角層上・中・下層をtape stripで分取し、ノンターゲットリピドミクス解析を行う。解析から浮上した角層pH制御への関与が疑われる脂質の合成酵素のgRNAプラスミドを作製し、Cas9・角層pHイメージングマウスの皮膚を植皮したNSGマウスの植皮部にgRNAプラスミドを皮内注する。そして、角層pH ライブイメージングを行い、角層pHの制御に関与する分子を同定する。 3. 皮膚微生物叢による角層pH恒常性維持機構の解明:角層pHの恒常性維持に関わると推定される脂質の代謝酵素を欠損させたS.aureus, S.epidermidis を作製する。そして、野生型や皮膚炎モデルマウスの耳に塗布し、角層pHライブイメージングから角層pHと皮膚微生物の相互作用を明らかにする。 4. コルネオトーシスの起動シグナルの同定:SG1 細胞のRNA-seq データから、コルネオトーシスの起動シグナルとなりうる分子を絞り込み、候補分子のgRNA プラスミドを作製する。そして、Cas9とCa2+プローブが導入されたマウスの皮膚を植皮したNSGマウスの植皮部にgRNAプラスミドを皮内注し、コルネオトーシスのライブイメージングを行い、コルネオトーシスの起動シグナルを同定する。
|
Research Products
(9 results)
-
[Journal Article] Three stepwise pH progressions in stratum corneum for homeostatic maintenance of the skin.2024
Author(s)
Fukuda K, Ito Y, Furuichi Y, Matsui T, Horikawa H, Miyano T, Okada T, van Logtestijn M, Tanaka RJ, Miyawaki A, *Amagai M
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-