2022 Fiscal Year Research-status Report
建築倫理から捉え直したウィトルウィウス『建築書』の総合的研究
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22K00010
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬口 昌久 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40262943)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウィトルウィウス / 建築書 / リベラルアーツ / 建築倫理 / 工学倫理 / キケロ / 義務について / 高潔 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度はウィトルウィウスの『建築書』が建築倫理をはじめ、ひろく工学倫理にとって現代的意義をもつことを中心に研究をすすめることになった。ウィトルウィウスの『建築書』の大きな特色の一つは,様々な工学技術を含む広い意味での建築が,技術の実践や経験だけではなく,多くの学問と幅広い教養を必要とすると考えた点にある。学問なき才能も,才能なき学問も完全な技術者をつくることはできないとして,建築家に文学,絵画,幾何学,歴史,哲学,音楽,医学,法律,天文学の知識と教養を身につけることを求めた(『建築書』第1書1.3)。philosopia(哲学)やphilosophus(哲学者)という言葉も,『建築書』で15回も使われている。中でもウィトルウィウスの哲学についての考え方がよくわかるのが,建築家にとって哲学が何かを論じた第1書1.7である。そのなかで、哲学から学んで「偉大な魂」,「高潔さ」,「貪欲からの自由」を得るという表現は,市民の義務について述べたキケロの『義務について』の表現に類似する(Rowland & Howe 1999: 136)。『義務について』は,『建築書』の10年前に書かれているので,ウィトルウィウスは読んでいた可能性が高い。このほかの箇所でも,『建築書』には,建築家の仕事に関わる仕方で倫理が明確に述べられ,倫理観を身につけることが求められている。今日でいう「技術者倫理」や「工学倫理」のさきがけのような考え方が,『建築書』には記されていることを確認した。 ウィトルウィウスの『建築書』における教養の重視は,工学技術がひろく社会に受け入れられ,人々に喜ばれるためには,技術者にとって何が必要なのかをあらためて考えさせる内実をもつ。技術者が,より人間的な技術者になるには,何が重要かを問いかけている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は本務校で教室主任の仕事のロードがかなり大きく、研究活動を圧迫したために、研究計画の遂行に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ウィトルウィウスに影響を与えたルクレティウスの思想との連関について、テクストの調査と比較検討を行いたい。『建築論』において、建築学や材料工学分野については、とくに古代原子論の影響が強いと見込まれるからである。
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Causes of Carryover |
2022年度は大学運営業務の負担が大きく、研究計画に遅れが出たために、助成金の使用にも支障が出た。今年度は、大学の運営業務の負担が減ったので、計画の遅れを取り戻すために、昨年購入できなかった書籍をふくめて助成金の活用を行う。
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Research Products
(3 results)