2022 Fiscal Year Research-status Report
ベルクソン哲学の概念生成と自然科学・芸術の関係―『思考と動き』などを対象にして
Project/Area Number |
22K00014
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
三宅 岳史 香川大学, 教育学部, 教授 (10599244)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 既視感 / 心的エネルギー / 記憶 / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定通り、研究一年目は『精神のエネルギー』の「現在の回想」論文に収められている既視感を巡る議論の研究を実施した。当時の心理学のなかでの既視感に関する説がどのように位置づけられ、それらがベルクソンの所説とはどのような重なりや相違が存在するかということについて把握することを目的としたが、参照される30にのぼる文献の中には、大部の著作もあり、文献の数が多く全てを分析しつくすことはできなかった。 重要な文献と思われるピエール・ジャネの『強迫観念と精神衰弱』、ベルナール・ルロワ『誤った認知の錯覚』などを中心に分析したが、ハイマンスの研究について触れられるところで焦点化される心的エネルギーの重要さに気づき(この気づきは他の研究との関連でなされた)、研究の方向性が定まった。(もちろん既視感にはイメージの二重化というテーマもあるが、おそらくこれも心的エネルギーと関連づけは可能である) ハイマンスの他にも本論で参照されるピエール・ジャネ、マイアーズ、ウィリアムズ・ジェイムズなどが心的エネルギーを論じており、これは『精神のエネルギー』に所収されている「心霊研究」論文にも関連するテーマである。ベルクソンは論文集のタイトルを『精神のエネルギー』としているが、その由来については細かく議論をしているわけではないし、他の心理学者や哲学者と比べた場合、ベルクソンはこの概念を表立って使用するわけでもないので、心的エネルギーという概念がどのような役割をこの論集で果たしているかを大きな問題とし、その問題の一例として「既視感」というテーマを位置づけ、既視感という現象を説明する際に心的エネルギー概念がどのような役割を果たしているか、当時の心的エネルギー概念と比較しながら整理すれば、研究としてまとまりが出るということが分かった。以上の研究の見通しが得られたことが、本年度の研究の成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の研究は「現在の回想」論文が対象であったが、研究の予定を立てたころからこの論文は参照文献が比較的数が多く、分析に時間がかかることが予測されていた。そのため、1年で分析が終わらなかったことは想定よりも遅れているとはいえるが、分析を進める中で研究の方向性も定まってきており、重要な文献とそうではない文献についても区別はついてきている。現在では重要な文献については、解読は終わりつつあるため、進捗状況は「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究予定については、研究の当着点についても見通しがついているため、予想外なほど遅れているというわけではない。ただしドイツ語の文献については、思っていたよりも時間がかかっている。そうはいっても、それらは研究2年目に遅れを取り戻すことが可能な程度の遅れであり、関連する残りの重要な文献をなるべく早く解読することにし、それ以外の文献の解読へと進み、2年目の「力動的図式」の分析に速やかに移行する予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染拡大などで予定していた旅費が発生しなかった。 また当初の研究で分析が必要な文献が、オンライン上で閲覧可能な文献であったため、文献購入費についても現在のところは発生していない。 今後は、コロナ対策が緩和される見込みなので、予定していた旅費についても使用見込みであり、また文献についても今後はオンラインで閲覧可能なものばかりとは限らないものを分析する予定であるので、今年度使用しなかった分についても使用見込みである。
|
Research Products
(2 results)