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2023 Fiscal Year Research-status Report

ベルクソン哲学の概念生成と自然科学・芸術の関係―『思考と動き』などを対象にして

Research Project

Project/Area Number 22K00014
Research InstitutionKagawa University

Principal Investigator

三宅 岳史  香川大学, 教育学部, 教授 (10599244)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2026-03-31
Keywords心的エネルギー / 質的微積分 / ベルクソン / エネルギー論 / 精神物理学 / フェヒナー / ピエール・ジャネ / 心的緊張
Outline of Annual Research Achievements

本年度は研究二年目であり、研究一年目の成果を発展させる形で研究を行った。前年の研究テーマは、ベルクソン『精神のエネルギー』所収の「現在の回想」論文で集中的に議論される「既視感(デジャヴュ)」であったが、参照される論文を解読していくとそこで「心的エネルギー」という概念が背後で大きな役割を果たしていることに気づき、むしろこの概念が多様な領域で展開される一つの事例として「既視感」というテーマを論じることが適切であるという結果になった。
このため本年度では、19世紀後半に広まりを見せていた「心的エネルギー」という概念の展開を明らかにするために研究を実施した。「心的エネルギー」という概念がフェヒナー以来、三つのタイプに整理されるというエランヴェルジェの議論を確認しつつ、第一のタイプである物理学者や生物学者などのエネルギー論者の文献(ヘッケル、オストヴァルト)の調査を行った。また第二のタイプとしてフロイトの草創期の論文である『科学的心理学草稿』(1895)の分析し、第三のタイプとして、とくにベルクソンと関連の深いピエール・ジャネの諸文献を分析した。『心的自動症』(1889)、『強迫観念と精神衰弱』(1903)で登場する、精神的力や心的緊張の概念が心的エネルギー概念の内実をなすことが判明した。
これらの研究成果については、第27回科学史西日本研究大会で「19世紀末の精神物理学をめぐる論争と心的エネルギー概念の展開」というタイトルで研究発表を実施した。またこれらの背景をなす論文「ベルクソンと「記憶の科学」の台頭」の英語論文"Bergson and the Rise of 'the Sciences of Memory'"をYasushi Hirai, ed. Bergson's Scientific Metaphysics, 2023, Bloomsbury Academicから出版した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

研究二年目のテーマとしては「動的図式」であったが、心的エネルギー概念との関連の深さから研究三年目に行う予定であった「質的微積分」という概念の研究を先行して実施した。それというのも、心的エネルギー概念の内実を人間心理という枠組みを超えて、世界の構造へと拡張する枠組みこそが質的微積分という概念であるからだ。
この概念の背景を分析するために当初予定とは異なって、Jean Milet, Bergson et le calcul infinitesimal, 1974, PUFを再読した。さらにそこで言及されていたA. Cournot, Essai sur les fondements de nos connaissances et sur les caracteresを分析し、その第13章「連続性」では質的と量的の区別が行われ、そこで行われる「質的連続性」の分析はベルクソンの質的微積分との親近性があるのではないかという見通しを得た。
ただしこの作業を行ったため、当初予定していたル・ロア、ヴァンサン、ヴィルボアの『道徳・形而上学雑誌』の論文の分析を行えていない。そのため「やや遅れている」と判断した。上述の成果と予定されていた研究を実施し、両者を総合する形で研究を進めていくことが今後の課題である。

Strategy for Future Research Activity

心的エネルギー概念の歴史的な展開については、これまでの研究でだいぶ見通しをつけることができ、とくに心理学や病理学の分野でこの概念を用いたピエール・ジャネの文献でどのようにこの概念が用いられているかということについても、理解することができた。
おそらく今後の課題としては、この心的エネルギー概念が「既視感(デジャヴュ)」や「動的図式」などに現れる知的努力といかに結びついているのかを個々の事例に即しつつ、丹念に分析していくことである。また、心的エネルギー概念と質的微積分概念の結びつきについても、両者が構造的に共通性をもつという見立ては得られているのだが、これを証拠づける文献的な作業については、今後、詰めていく必要がある。

Causes of Carryover

研究当初に予定していたPCなどの買い替えを実施していないので、かなり多くの物品費の予算が執行されずに残されている状況であるが、使用しているPCやソフト、周辺機器などについては古くなっているものもあり、今後適宜、予定していたものを購入していく見通しである。また文献などについても、たまたま研究対象がインターネットで閲覧できるものが中心となっているが、研究が進むにつれて、予定していた文献の購入も必要性は消えておらず、今年度までに使用しなかった研究費も使用見込みである。

  • Research Products

    (2 results)

All 2023

All Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] 19世紀末の精神物理学をめぐる論争と心的エネルギー概念の展開2023

    • Author(s)
      三宅岳史
    • Organizer
      日本科学史学会西日本研究大会
  • [Book] Bergson's Scientific Metaphysics2023

    • Author(s)
      Yasushi Hirai
    • Total Pages
      272
    • Publisher
      Bloomsbury Academic
    • ISBN
      9781350341975

URL: 

Published: 2024-12-25  

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