2023 Fiscal Year Research-status Report
From Hate Speech to Hope Speech: An Inquiry into Future-Oriented Linguistic Environments
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22K00020
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
和泉 悠 南山大学, 人文学部, 准教授 (10769649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒井 ひろみ 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, ユニットリーダー (20631782)
永守 伸年 立命館大学, 文学部, 准教授 (70781988)
谷中 瞳 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10854581)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホープスピーチ / ヘイトスピーチ / 倫理学 / 言語哲学 / データセット / 自然言語処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、既存のヘイトスピーチ研究を応用し、一部の研究者が「ホープスピーチ」と呼ぶ言語現象を検討し、より望ましい言論空間の姿はどのようなものか描き出すことである。 今年度は、ニュースサイトや動画サイトへのユーザーの日本語投稿を利用して、英語を主な対象として行われてきた先行研究を日本語へと拡張した。まず、先行研究における「ホープスピーチ」の定義を整理しつつ課題点を洗い出し、哲学分野における希望研究を参照することにより、改善された定義を提案した。次に、その定義を基準として、YouTubeにおける日本語ニュース動画へのコメントにラベルづけを行い、約1万件のコメントで構成される日本語ホープスピーチデータセットを作成した。動画の種類としては、紛争や戦争に関連する報道番組の動画に焦点を当てた。結果として明らかになったのは、ホープスピーチとみなせる、なんらかの希望を表すような投稿は非常に少ない一方で、有害性をともなう投稿が非常に多かった点である。その中には、揶揄や冷笑、偏見の発露、不謹慎な冗談から、動画と無関係な性差別的な発言や、ヘイトスピーチに近い排外主義的なコメントまでが含まれていた。 重要なのは、誰もが閲覧することができる、公共性の高い報道番組の動画へのコメント欄においても、ホープスピーチは非常に少なく、有毒性が高かった点である。今後、同様のパターンが、別の媒体やトピックに関する投稿においても観察されるかどうかが検証されるべきである。また、有害性を抑制する可能性についても検討されるべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホープスピーチにかかわる日本語データセットを実際に作成し、先行研究と比較を行うという、研究計画の主要な部分を達成できたため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ホープスピーチについての知見を深めるため、ホープスピーチ日本語データセットをさらに拡張していく。そのために、オンライン上のより多様な媒体の投稿を収集し、分析をおこなっていく。
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Causes of Carryover |
国際会議への参加をしなかったこと、また、データ収集のトピックを選別したため人件費支出が抑制されことにより、次年度使用額が生じた。今後、国際会議への参加、また、データ収集の範囲を拡大するために予算を使用していく。
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