2022 Fiscal Year Research-status Report
知識・対話・思考についての理論的・実践的研究ー対話型哲学教育に着目してー
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22K00024
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
村瀬 智之 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00706468)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 知識 / 対話型哲学教育 / 子どもの哲学 / 資質・能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は研究プロジェクトの初年度でもあるため、研究発表、および、それらをもとにした論文の執筆と投稿等を中心に研究プロジェクトを推進した。 研究実績としては国際子どもの哲学研究学会、および、応用哲学会において研究発表を行うとともに、それらの発表と議論をもとに論文執筆にとりくんだ。 具体的には、子どもの哲学を進行する教師たちに対してどのような知識や思考法が必要とされるのかという点を、これまでの子どもの哲学の理論的研究および分析哲学における技能知の研究をもとに精査・分析した。また、国内における資質能力概念をもちいた教師の能力の分析を批判的に精査した。これらは、既存の研究の分析結果を教師教育の観点から見直すことでもあり、子どもの哲学において教師の身につけるべき能力としてどのように語られてきたか、また、教師の資質能力がどのように国内において語られてきたかといった点を今後さらに詳しく精査・分析していきたい。 同時に実践的研究として教育実践の調査と、いくつかの新しい授業プランの試行を研究協力者の助力を得て実施した。コロナ感染症の影響もあり、当初の調査予定地とは違ったものの、すでに関係性のある対象地域をさらに深く調査することによって学校外の活動への広がりという観点を得ることができた。学校外活動である一方で構造化されたアクティビティである面も有するこの活動を調査できたことによって、本研究プロジェクトの目標の一つである授業案の作成に際して、その枠組を拡張するような知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は研究プロジェクトの初年度でもあるため、まず本プロジェクトの支柱の一つである理論的研究のための基礎資料の収集と分析を行った。具体的には対話型哲学教育、特に子どもの哲学Philosophy for Childrenの実践において知識や思考(力)といったものがどのように議論されてきたかを文献調査を通して精査した。同時に、国内での議論において、「資質・能力」といった概念がどのように語られ教育実践の中に持ち込まれてきたかを調査分析した。その結果、特に教師教育や教師の能力に着目することで、より明確な分析を得られるとの見通しを得ることができた。教師のあり方という観点に着目することで、知識や思考に関する既存の議論を整理・分析できたことは大きな研究的進捗であった。順調に理論的研究を進めることができた。 また、実践的調査としては海外の教育実践の調査に加えて、新しい授業プランをいくつか試行することができた。この点は当初の予定よりも早く研究が進んでいる。当初はオーストラリアおよびイギリスでの実地調査を予定していたがコロナ感染症拡大の影響もあり、すでに繋がりのあったアメリカ・ハワイ州での実践調査を行った。学校での実践に加えて学校外での実践に立ち会うことができ、これまで強調されてこなかったハワイ州での実践の一側面を知ることができた。一方で、そのような学校外活動が学校内での活動と深く結びついている点も確認できたことで、本研究プロジェクトにおいても有益な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、昨年度の研究発表をもとに論文執筆を継続し、成果の一部を発表することを目標として研究に取り組んでいきたい。これは教師に着目した研究の一環として位置づけられる。同時に、これまでの研究から明らかとなってきた哲学教育における知識の独特の役割についてもさらに精査を加え、対話型哲学教育において育まれる知識や思考力の実相を明らかにしていく。具体的には、これまでも取り組んできたスキルや技能知に関する議論に加えて、徳や傾向性といった、それらの上位概念ないし下位概念についても調査対象を広げることによって、理論の拡張を図るとともに、これまでの研究を大局的な観点から位置づけていきたい。 同時に、実践研究としては、コロナ感染症等の拡大状況も見据えながら、昨年度実施できなかった実地調査に取り組んでいきたい。昨年度の調査からすでに多くの調査が入っているアメリカハワイ州の実践にも調査・分析すべき対象が残されていることが判明している。そのため、調査対象を広げすぎ「浅く広い」調査になってしまわないように注意しながら、研究プロジェクトの遂行にとって適確な調査対象の選定を意識していきたい。 また、授業実践に関する研究については、研究協力者の助力も得ながら、授業内での実践の分析に加え、新たな授業プランの作成・改善を随時行っていく。多様な調査者が授業プランの作成や調査に入ることによって効果検証を正確に行えるようになるだけでなく、授業のやりやすさといった、授業プランの汎用性の確保や質の向上につながるものと期待できる。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響により当初予定されていた海外での実践の調査の一部が遂行できなくなったため。 また、当初予定していた研究補助者の雇用が人物の選定に時間がかかったこともあり、後期からとなったため。
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Research Products
(4 results)