2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructing Aristotle's conception of Ousia
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22K00043
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩田 圭一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00386509)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アリストテレス / カテゴリー / 実体 / 述語づけ / 基体 / 変化 / 運動変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリストテレスの論理学的著作、自然学的著作、『形而上学』などを手がかりにして「ウーシアー」という語の意味合いを明らかにすることが本研究の目的であるが、本年度は、ウーシアーが変化するものであることに焦点をあて、とくに『カテゴリー論』第5章と『自然学』第5巻第1章における変化(メタボレー)ないし運動変化(キーネーシス)に関する論述を取り上げて考察を行い、論文として発表した。変化するものとしてのウーシアーはもちろん個物としてのそれであり、『カテゴリー論』においては第一の実体がそのようなものであると考えられる。『カテゴリー論』における第一の実体についての説明は、それが種、類、属性にとっての究極的な基体であることを強調したものとなっているが、この説明はいわゆる裸の基体としての実体という考えをもたらす可能性がある。実体カテゴリーのものを付帯的な属性から区別し、実体カテゴリーのうちで類を種に分割し、種を個に分割するという仕方で第一の実体は見出されるが、種、類、属性に対する第一の実体の存在論的な優位性の主張も考慮に入れるとき、第一の実体は、種、類、属性から区別された存在であるように思われる。しかしアリストテレスは、裸の基体としての実体という、問題のある存在を立てようとしていたのではない。『カテゴリー論』第5章と『自然学』第5巻第1章における変化の説明から、アリストテレスにとって個物としての実体はそれ自体が変化する具体的なものであるということがわかる。本年度の研究では、これらのテクストを丁寧に読解し、具体的な個物としての実体という考えが確かなものであることを示し、第一の実体の存在論的な優位性の主張が行われる際のアリストテレスの観点(述語づけの理論の観点)に注意するべきであることを明確にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『カテゴリー論』第5章と『自然学』第5巻第1章のテクストの読解を行い、変化に関する説明について考察を行い、アリストテレスがウーシアーとみなすものがさまざまな属性を担った具体的な個物であることを明確にした。『カテゴリー論』に見られる、述語づけの理論の観点に立った存在論的な優位性の主張は、それだけでは、裸の基体としての実体という問題のある考えをもたらす可能性があるが、変化に関する説明まで含めて考えることによって、具体的な個物としてのウーシアーという考えをアリストテレスに帰することができることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2024年度は、『形而上学』中心巻におけるウーシアー論の重要な箇所を取り上げる予定であったが、「ウーシアー」という、カテゴリーの第一のものの意味合いを明らかにするには、『カテゴリー論』のテクストについてさらに立ち入った考察を行う必要があると考えるに至った。2024年度は、『カテゴリー論』のテクストの読解を中心に研究を進め、「ウーシアー」の意味合いをより深く理解し、訳語の問題について一定の見解を提示することにしたい。
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Research Products
(1 results)