2022 Fiscal Year Research-status Report
1870年代ニーチェ哲学における自然理解の再検討―統一的なニーチェ解釈を求めて
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22K00046
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
竹内 綱史 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (40547014)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ニーチェ / 悲劇の誕生 / 分析系 / ニヒリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究実績は主に3点に分けられる。①ニーチェ『悲劇の誕生』を読み直し、形而上学的自然哲学と歴史哲学の葛藤を分析した。②「分析系」と呼ばれるニーチェ研究の状況をまとめた、③現代日本における「ニヒリズム」と宗教の関係について調査した。 ①『悲劇の誕生』という著作における歴史哲学が、形而上学的自然哲学によっていかに歪められたかを明らかにし、ヴァーグナーによるギリシア悲劇の「復活」というシナリオとは別に、学問的誠実さを梃子として新たな歴史を切り拓くシナリオがすでにこの著作にもあったことをニーチェの草稿等から示すことで、後のニーチェ哲学につながる論点を取り出した。その成果は10月のNietzsche Gesellschaftで口頭発表した。 ②「分析系」と呼ばれるニーチェ哲学研究の潮流がどのように形成されたのかを歴史的に概観した。「分析系」を内容的な分類ではなく方法論的な分類と考えることで、対立状態にあるニーチェ研究の諸潮流を糾合する方向を取り出した。『フィルカル』Vol.7, No.2で論文を公表した。 ③ニーチェ哲学の中心問題である「ニヒリズム」の観点から現代日本における人生の意味に関する議論と宗教状況を分析した。超越的なものに頼ることを良しとしない一方で、人生をトータルに肯定する視点をいかに獲得するかという問題は、ニーチェ哲学においても、現代日本においても、重要な課題となっている。成果の一部を編著『宗教学』(昭和堂、2023年)の担当章で論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
哲学史的な部分の研究があまり進んでいないが、ニーチェ研究の諸潮流や現代的諸問題についての考察は当初予定以上に進んだため、全体としてはおおむね順調と言える。 海外渡航費が高騰しているため、国際学会での発表は1回のみとならざるを得なかったが、その1回は実り豊かなものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航費の高騰のため国際学会の現地参加は回数を制限せざるを得ないが、その分はオンライン参加や論文等の執筆に時間をかけることにする。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 宗教学2023
Author(s)
伊原木大祐、竹内綱史、古荘匡義
Total Pages
288
Publisher
昭和堂
ISBN
978-4-8122-2215-7