2023 Fiscal Year Research-status Report
1870年代ニーチェ哲学における自然理解の再検討―統一的なニーチェ解釈を求めて
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22K00046
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
竹内 綱史 龍谷大学, 経営学部, 教授 (40547014)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 歴史主義 / 自然主義 / ニーチェ / 真理 / ポストトゥルース |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究実績は主に2点に分けられる。①ニーチェ哲学における「自然主義」と「歴史主義」の関係について、②ニーチェの真理論について。 ①自然主義と歴史主義という対立は、19世紀から20世紀にかけての哲学の基本対立であり、ニーチェはまさにその対立のなかで哲学していたわけだが、本研究の対象である前期(1870年代)のニーチェは公刊著作においては歴史主義的立場をとっている一方で、遺稿においては自然主義の可能性を探っていた。その自然主義が中期以降(1880年代)に前景に出てくることになるのだが、その経緯は、前期の公刊著作で前面に出ていた歴史主義的なものを自然の中へも読み込んでいくというものではないか、という仮説が立てられうる。その仮説を検証するために、まずは前期の歴史主義的立場(特に『生に対する歴史の利と害について』)が中後期とどう繋がるかを改めて検討し、10月の東北哲学会で報告した。 ②ニーチェの真理論は相対主義的であり、現代のポストトゥルースに影響を及ぼしているとたびたび指摘されているが、それは誤解であって、むしろ科学的探究に範をとった真理理解が中心ではないのかということを検討した。「パースペクティヴィズム」という(後期)ニーチェの認識論的立場は、「すべては解釈である」という言葉とともによく知られているが、それは「恣意的な解釈がいつでも許される」というような意味では全くなく、絶対的真理への到達不可能性とわれわれの認識の常なる更新可能性を言っているものである。それはつまり、「より正しい」認識への探求可能性がいつでも担保されていることを意味している。現在この問題を一つの中心テーマとした著作を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の業務が当初の予想以上に忙しく、あまり本研究に集中する時間が取れなかった。また、うまく都合がつかず、2023年度は国際学会での発表もできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は2023年度の口頭発表の論文化と執筆中の単著の完成を急ぐことになるが、それ以外にすでに国際学会での発表や国内学会シンポジウムでの提題などが決まっており、本研究と密接に関連するものばかりなので、順次進めていきたい。
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Causes of Carryover |
都合がつかなかったので国際学会での発表ができなかった一方で、次年度に予定していたものも含めて図書を多く購入したが、国際学会参加予定旅費との差額が残額として次年度に繰り越しとなった。次年度は国際学会での発表を2回予定しており、全体としては予定通りの使用額となる予定である。
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[Book] 宗教学2023
Author(s)
伊原木大祐・竹内綱史・古荘匡義編
Total Pages
288
Publisher
昭和堂
ISBN
481222215X