2022 Fiscal Year Research-status Report
The origin and development of the Parārthānumāna theory in Dignāgaʼs Pramāṇasamuccaya
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22K00053
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 基 筑波大学, 人文社会系, 教授 (00272120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 俊和 國學院大學, 文学部, 准教授 (20822159)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ディグナーガ / ジネーンドラブッディ / インド仏教論理学 / テキスト校訂 / 他者のための推理 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度の前半は主として、本研究課題(『集量論疏』第3章梵文校訂テクストの出版準備)の前提となるジネーンドラブッディ著『集量論疏』第4章の校訂本の出版に残されていた課題を解決するための検討に時間を費やした。具体的には、『集量論疏』第4章が註釈するディグナーガ著『集量論』第4章の偈文について従来提案されていた還元梵文とそのナンバリングについての問題点を検討し、9月にオンラインによる第1回の研究会を開催して、その改訂案を議論した。その結果、新たに二つの半偈を挿入して『集量論』第4章全体の構成を従来考えられていた21偈から1偈増加させて22偈とみなすことが適切であるとの結論に至り、2024年度に予定される『集量論疏』第4章梵文校訂テクストの出版に当たっては以上の新しい偈の構成仮説に基づいてテクストのナンバリングを行い、校訂本の記述を行うこととなった。 年度の後半には、本研究課題の眼目である『集量論疏』第3章「他者の為の推理」章に関し、その後半の他学派批判の部分の校訂テクスト出版の具体的な準備作業を開始した。その成果の取りまとめのために年度末の3月に、研究協力者の所属する関西の二大学(神戸女子大学と龍谷大学)に研究代表者と研究分担者が赴き、対面による研究会を開催して、他学派批判の部分の冒頭に位置する『論軌』批判の節の検討を行った。 それ以外にも、研究チームの各メンバーは、各自で関連するテーマでの学会発表を行うとともに、各々国際会議論文や国際学術雑誌に研究課題に関連した英語論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ここ数年来のコロナ禍の影響で、予定していた『集量論疏』他章の校訂本の出版が遅れ、上記のように年度の前半ではそれらの出版に向けて残存した課題を解決することに或る程度の時間を費やさざるを得なかった。さらに、年度の前半までは未だコロナ禍による海外出張や対面研究会の定期的開催に支障があったため、研究代表者と研究分担者の二人は8月に韓国ソウルで開催された国際学会(第6回国際ダルマキールティ学会)への対面参加を見合わせた。研究分担者はオンラインで研究発表を行ったが、研究代表者は研究発表自体をキャンセルしたため、本研究課題の核心的概念の一つである「疑似論証因」学説の仏教論理学派における生成過程を探求し海外の専門家と意見を交換する、という研究代表者の初年度の課題は、今年度以降の研究に持ち越された。また、当初予定していた対面での研究会開催も年度末に行った一回に留まり、『集量論疏』第3章校訂テクストの出版準備の具体的作業は予定した分量の半分程度しか終了できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度後半からはコロナ禍も終息に向かっており、今年度は対面での定期的な研究会開催も可能な状況になっている。7月以降、できれば3回程度の対面での研究会(9月東京、12月京都、3月つくばの予定)を開催し、『集量論疏』第3章の後半部の内、『論軌』批判の節に後続するニヤーヤ学派批判、ヴァイシェーシカ学派批判の箇所について、校訂テクストの出版準備の具体的作業を終えたいと考えている。また9月半ばに研究代表者がオーストリア科学アカデミー・アジア宗教文化史研究所の共同研究者(Horst Lasic博士とPatrick McAllister博士)を訪問し、現在の彼我の研究状況について報告し合い、また幾つかの具体的な問題を検討する機会を設けたいと考えている。また今年度は年内に『集量論疏』第6章校訂本の出版を完了するとともに、引き続き第4章の出版の最終作業にも入りたいと考えている。
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Causes of Carryover |
上記のように、昨年8月にソウルで開催された国際学会の対面参加を研究代表者と研究分担者が二人とも見合わせたため、当初計上していた一人20万円程度の海外渡航旅費が未使用となったのが、次年度使用が生じた最大の理由である。繰り越し分については、今年度から新たに研究分担者が一人増加したため、その分担者への経費の配分に充てる他、9月に予定されている海外出張旅費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)