2022 Fiscal Year Research-status Report
ルネサンス共和主義から啓蒙の政治思想へーーマキァヴェリアン・インパクト
Project/Area Number |
22K00091
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿子生 浩輝 東北大学, 法学研究科, 教授 (10336042)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マキァヴェッリ / ルネサンス / 啓蒙 / 世俗化 / ルソー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、マキァヴェッリの『ディスコルシ』のの受容史を探求することである。彼の『君主論』が多くの場合にきわめて否定的な評価を受けてきた一方で、『 ディスコルシ』の影響は、実のところ複雑である。 一部の読者はこの著作に否定的な評価を下しつつも、一部の知識人は、きわめて積極的にそれを受け入れ、マキァヴェッリを偉大な政治理論家と論じている。こうした肯定的な評価は、例えば、モンテスキュー、ルソー、ヒュームのように、宗教改革後の対立が比較的穏健化した啓蒙時代にいっそう明らかとなる。本研究の独自性は、 三人の知的巨人がいかにマキァヴェッリから思想的影響を受けたかを明確する点にある。 啓蒙の思想家の理論的特徴の一つは、その世俗性であり、神学的・ 宗教に基づかない政治的説明こそがマキァヴェッリの魅力の一つであったと推測される。本研究の成果の一つは、モンテスキューとマキァヴェッリの理論的関係を明らかにしたことである。モンテスキューの『ローマ人盛衰原因論』にはマキァヴェッリの『ディスコルシ』から直接的な影響を見出すことができる。モンテスキューは、ローマの盛衰原因を説明した多くの個所でマキァヴェッリの説明をそのまま受け入れている。ところが、ローマの共和政期を称賛したマキァヴェッリとは異なり、フランス王政の劇的な変革を求めない彼は、マキァヴェッリが示唆した「衰退」原因を前面に押し出した。ローマの覇権拡大政策こそがその自由の崩壊の主要因であったという説明は、モンテスキューの時代のフランスに対する実践的な関心に支えられていた。すなわち、その実践的な関心とは、フランスの対外的な拡大政策を阻止することであった。 本研究のこれまでの成果のもう一つは、マキァヴェッリの『ディスコルシ』の翻訳にある。全三巻のうち第一巻については2023年度中には出版の見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナによる海外渡航の困難と体調不良によるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナも終息に向かいつつあり、体調も回復しているため、今後は予定通り、研究が進むと予想している。本研究は、マキァヴェッリの『ディスコルシ』の受容の歴史を探るものであるが、この作業は、同時にルネサンス期の政治思想の包括的な理解を進めることである。そのため、2023年度は後者の観点から論文を一つ執筆し、論文集という形で他の研究者とともに著作を公刊する予定である。さらに、2023年度はマキァヴェッリとルソーの思想的関係を明確化することに主軸とする。また『ディスコルシ』の翻訳についても引き続き進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
以前から継続している研究のうちの旅費がコロナの影響で消化されず、次年度に持ち越しとなったため、それを2022年度の諸費用に充てることができた。その分は、2023年度に使用する予定である。
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