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2022 Fiscal Year Research-status Report

Reconsideration of the applications of the mathematical logic in "French Thought".

Research Project

Project/Area Number 22K00103
Research InstitutionKagoshima University

Principal Investigator

信友 建志  鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (60735348)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsジャック・ラカン / 資本主義のディスクール
Outline of Annual Research Achievements

フランスの哲学者、アラン・バディウの愛とセクシュアリティに関係する議論における数理論理学的な概念の導入とその展開を、フランスの精神分析家、ジャック・ラカンとそのグループにおける愛とセクシュアリティに関する数理論理学的概念と対比する、という目的のもと、2022年度はまずラカンにおける愛の位置づけを解明することからとりかかった。
方法論としては、「愛と対立するものとしての資本主義」という主旨のラカンの発言を手がかりに、かれの資本主義のディスクールについての考察の思想史的系譜から対照するかたちでラカンにとっての愛の主題を位置づけるというルートが選ばれた。
具体的には、まず2022年9月の日仏哲学会秋季大会における発表「ラカン『四つのディスクール』の生成過程の検討 」において、かれの言説理論における愛の位置づけを確認し、その成果は現在同学会の学会誌『フランス哲学・思想研究』に論文として投稿・査読待ちの状況である。
これらは、通常ラカン思想初期の「宮廷愛」、後期の「性別化」や「女性性」の問題の一環として扱われてきた愛という主題を、資本主義のディスクールという補助線を引いたことで、より広く、かつラカンにとっての数理論理学化の主対象でもあった、言説理論の枠内に位置づけることに成功した点において、ラカン研究において大きな意義を持つものである。
また、上記の研究があくまで理論的・構造論的研究であったことを補うべく、その補完的作業として以前から行われていた、現代社会における資本主義の諸相についての海外文献の紹介として、グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』の翻訳出版を行った。また同著に付した訳者解説「シュミット=ハイエク主義の時代に」においては、「日常生活の資本主義」ともいうべき現代人にとっての新自由主義的な資本主義言説の実情をクリアに描写することを試みている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

方法論的に慎重を期したため、本来の計画にひとつ予備的作業のステップを付け加えることとなった。具体的には、資本主義のディスクールという補助線を引くことで、ラカンにとっての「愛」という主題を、より広いかれの思想史的展開のなかに位置づける、というものである。このステップを踏むことにより、研究計画の進行としては、プロセスひとつ分遅れることになった。成果公表という点においても、予期していたより若干査読待ちの状況が長くなっていることは否定できないが、これは学会規定およびテーマの難解さを考えればやむを得ない事情であろうと思われる。

Strategy for Future Research Activity

作業進捗に若干の遅れをもたらした予備的作業のステップ追加により、幸いにも結果的には言説理論という、「ジャック・ラカンにおける数理論理学的考察の援用」のより広い事例が存在する研究史のなかに本研究を位置づけることが可能になった。今後はこの観点からの事例をさらに収集・整理および位置づけを行うことが必要になる。具体的には、これまで「性別化のマテーム」というかたちで個別に扱われていたテーマを、言説理論の枠内に位置づけることで、ラカンがこのマテームにおいて援用した数理論理学的解説のより深い意図を解明することである。
ただし2023年度はそちらより先に、アラン・バディウについての作業に取りかかりたい。バディウにかんしては、近年の講義録の相次ぐ公刊によって、かれのラカンにたいするより平易で率直な言及を当初の予想以上に多く確認できることが明らかになった。このため、当初予定していたバディウの理論的著作、具体的には『存在と出来事』三部作における数理論理学の援用の背景となるかれの立論の背景についての考察をよりいっそう充実させ、上記三部作の理論的・数学的難解さのためにともすればその援用の意図を見失いがちになる危険を回避する方向で分析を進めたい。2023年度はこのバディウについての作業を中心的に行い、少なくとも1本の論文としてまとめる予定である。この作業を通じた、バディウなりのラカンの意図に対する洞察とそれをもとにした対案として「バディウによる数理論理学の援用」を位置づけ、本項目冒頭に述べたラカンの分析とすり合わせることが来年度以降の目標となる。

Causes of Carryover

次年度使用額は181円という非常に少額のものであり、研究計画から考えてこの程度の額で購入すべき/購入できる物品等は存在しない。無用な物品の購入で貴重な予算を浪費することより次年度に繰り越すことが適切であると考えられる。繰越予算は引き続き書籍等に適切に使用される予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2022

All Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] ラカン『四つのディスクール』の生成過程の検討2022

    • Author(s)
      信友建志
    • Organizer
      日仏哲学会
  • [Book] 統治不能社会2022

    • Author(s)
      グレゴワール・シャマユー、信友 建志
    • Total Pages
      472
    • Publisher
      明石書店
    • ISBN
      9784750353876

URL: 

Published: 2023-12-25  

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