2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconsideration of the applications of the mathematical logic in "French Thought".
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22K00103
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
信友 建志 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (60735348)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラカン / バディウ / 精神分析 / エピステモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の実績はたいへん残念な結果に終わった。日仏哲学会刊行の『フランス哲学・思想研究』投稿論文のリジェクトなどにより、この論考を参照先として援用して書かれる予定だった後続論文もまた投稿時期の修正を余儀なくされたこともあり、刊行された業績は商業サイトのウェブ記事5本に終わっている(https://webmedia.akashi.co.jp/posts/7573)。ただし、翻訳のプロジェクトは順調に進んでおり、ラカンおよびバディウの寄稿も含まれる『分析手帖』の英語版選集の翻訳は脱稿済みであり、フランスのエピステモロジーおよび、ラカン、バディウ双方を含め、当時の同時代の哲学者による数理論理学の援用の実態に鋭く迫れるはずである。またエリック・マルティが現代フランス思想におけるセクシュアリティのテーマを論じた"Le Sexe des Modernes"(Seuil)の訳出も今年度早期の脱稿を目指して順調に進展しており、ラカンおよびバディウにおける愛のテーマの歴史的背景の分析も進むことが期待される。研究において、研究の進捗とともにより過去の、より基礎的な材料の再検討を迫られることは多々あることではあるが、あまりそちらに深入りしすぎることなく、最終目標とのバランスを崩さぬよう配慮しつつ研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
投稿論文のリジェクトもあるが、その過程で議論の枠組を一歩後退させ、ラカンおよびバディウの数理論理学の利用を当時のフランスのエピステモロジーのより広い文脈に位置づけなおす必要が明らかになったことがさらに大きな理由である。しかし、この作業を完遂することが出来れば、当初のラカンおよびバディウの数理論理学の利用という主題をより大きな思想史的文脈に埋め込めるという点で、必要な作業であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間の作業をもとに、ラカンおよびバディウの数理論理学の利用を、カルナップら論理実証主義、およびフランスのエピステモロジーにおいて「構文論と意味論」の対立として扱われていた枠組の中に位置づけなおす作業が進行中であり、これが1本の論文となる。この枠組をもとにすることで、ラカンにおける愛のテーマ、およびそれにたいするバディウの批判が明確に位置づけられることになり、それを扱う論文が1本用意される。あわせて並行して、先年リジェクトされたラカンにおける愛と資本主義のディスクールの関係についての論考のブラッシュアップ・再投稿を行うことで、ラカンにおける愛のテーマの具体的かつ現代社会に資する側面を1本の論文として刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
残金は書籍購入の端数であり、実務的にやむを得ないものと許容される範囲の残額であると考える。
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