2022 Fiscal Year Research-status Report
近代日本立憲主義の思想史的研究-「制憲」思想に着目して
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22K00117
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
林 尚之 立命館大学, 教養教育センター, 授業担当講師 (20733273)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 憲法思想 / 立憲主義 / 主権 / 人権 / 国体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本立憲主義の歴史を、主権・人権をめぐる思想の萌芽と展開を跡付けることによって描き出すことを目的としている。特に、戦前・戦中・戦後の連続性を重視しながら日本の改憲論を検討し、なぜ日本の改憲論が実態として「制憲」の思想に牽引され続けてきたのかを明らかにすることを試みている。 今年度は、主に、国体論と「制憲」思想との関りに着目して本研究課題における重要論点を掘り下げることに注視した。特に、田中智学・里見岸雄・石原莞爾のアジア主義思想の中核となっている王道論を検討・再評価する目的から、関連する先行研究および基礎的な史料を収集するため国会図書館等にて調査を行った。これらの調査を通じて、戦後の里見の憲法改正構想の根底にある、戦前から変わらないアジア主義思想について田中や石原の思想との関わりをふまえながら総合的に把握することが出来た。また、「八紘一宇」の思想がどのような文脈で形成され、戦時下を通して「大東亜共栄圏論」として展開し、戦後の改憲思想に引き継がれたのかを明らかにした。この成果は論文としてまとめた。今後は、これらの国体論の戦前・戦後の展開が、日本の「制憲」論の歴史的展開とその立憲秩序にいかなる影響を及ぼしているかを掘り下げていく。 さらに、今年度は、本研究課題と関連が深い研究会等への参加を通じて、日本とフランスの憲法史の異同をふまえた上で近代立憲主義が直面してきた問題の共有化を試み、「制憲」概念の理論的基礎づけを行うための手がかりを得ることが出来た。今後も引き続き、関連学会・研究会等への参加・議論を通じて得られた知見をふまえながら「制憲」概念の理論的基礎づけを進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、国体論と「制憲」思想の関りについての研究を進め、その成果を論文としてまとめるとともに単著として公刊するための準備を進めることが出来た。また、関連する研究会等への参加により「制憲」概念の理論的基礎づけも進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、計画に沿って国会図書館や関連する史料館等での調査を行い、戦前・戦中・戦後の連続性に着目しながら「制憲」思想と近代日本立憲主義の関わりを掘り下げていく。また、関連する学会・研究会等においてフランスおよび日本の思想史を専門とする研究者らとの議論を行い、それらの議論を通じて得られた知見をふまえながら「制憲」概念の理論的基礎づけを進めていく。なお、今年度に注力した里見岸雄をはじめとする国体思想の研究の成果に関しては、論文だけでなく単著としてもまとめているところであり、研究期間内にはこの単著の公刊を通じて本研究の成果を公表する計画である。
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Causes of Carryover |
国会図書館等での史料調査は概ね予定通り行ったが、一部の史料調査については、資料館が休館であった関係で次年度に延期することとなった。また、今年度行った研究を通じて新たな重要論点が見出され、その論点についての追加の史料調査および文献購入等の必要性が生じたため計画を一部変更し、次年度にそれらを実施することとした。
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Research Products
(1 results)