2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Kabuki Music for Small Theatre Performances in the Modern Era: the Case Study of Tokyo from the Late Taisho to the Early Showa Periods
Project/Area Number |
22K00130
|
Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
土田 牧子 共立女子大学, 文芸学部, 教授 (30466958)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 歌舞伎 / 小芝居 / 歌舞伎音楽 / 囃子方 / 近代東京 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、番付・筋書といったいわゆるプログラム類のデータベース化に主力を注いだ。調査を行ったのは、国立劇場、国立国会図書館、共立女子大学図書館である。これらの期間が所蔵する番付の内、とりわけ常盤座、観音劇場、公園劇場、宮戸座、神田劇場、大国座(のち山手劇場)に注視してデータを集めた。ただし、共立女子大学図書館所蔵の中・小芝居系(中小の劇場)の番付に関しては、網羅的な調査に努めたため、上記の劇場の他、市村座、新富座、寿座(寿劇場)、本郷座、東京劇場、新宿第一劇場、新橋演舞場などの劇場についてもデータを収集している。ただし、共立女子大学所蔵の東京の大劇場(歌舞伎座、帝国劇場など)および関西の諸劇場の番付については未調査である。また、国立劇場は非常に数が多く、2023年11月から2024年2月まで休室期間があったこともあり、調査が完了していないため、引き続き調査を継続する。 以上のような状況ではあるが、現時点で417点の番付について「初日年月・公演名・劇場・俳優・演目・演奏者名(長唄・竹本(義太夫節)・清元・常磐津・その他)についての情報をデータベース化した。全公演に比すればごく一部ではあるが、中・小芝居系の劇場における上演について、俳優と演奏者の動きが一定程度終えるようになった意義は大きい。 そこで、上記のデータベースをもとに、劇場-俳優-演奏者について分析したところ、現時点では以下のような成果を得ている。まず、中・小芝居系の劇場において、様々な役者たちが互いに共演もしながら、行き来していた様子を具体的に追うことができるようになったこと、そしてそこに出勤する囃子方たちについては、おおまかにいえば、劇場との結びつきが強く見られる場合と、役者との結びつきが強く見られる場合との両方の傾向が見られることである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は新型コロナ感染症の影響により、各種図書館の貴重書閲覧が制限されていたため、昨年度に本来今年度予定していた作業を行った。今年度の番付のデータベース化は本来の予定では昨年度に行う予定だった作業である。データベース化作業が完了したとは言えないが、今年度の調査によって一定以上の成果が出せていると考えている。引き続き調査を進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は2022年度と2023年度の研究成果を融合させて、望月太意之助所蔵の「宮戸座付帳」(付帳:演奏家が記す音楽演出の覚書・音楽台本)について、これまでに明らかになっていなかった上演情報を明らかにしたい。それにより、研究に使える資料がさらに増えることが期待できる。 その上で、「宮戸座付帳」と松竹大谷図書館所蔵の「杵屋花叟旧蔵付帳」を対象にして、具体的な音楽演出の分析に進みたい。音楽分析については、手法(どのような効果を生むか)と選曲(どの曲を演奏するのか)に分けて分析する方法をとる。また、付帳の記載から分かる音楽以外の演出面(例えば人物の登退場、セリフの有無、人物や場面の描写など)にも着目し、今まで明らかにし得なかった「どのように演じられたか」という点の解明にも努める。
|
Causes of Carryover |
海外資料の調査や海外研究者とのミーティングを今年度に行わず、次年度以降としたため。 当該年度繰越額と次年度配分額は合計で約1118千円を見込むが、その多くは次年度(2024年度)にイギリスで予定している資料調査や海外研究者とのミーティングに充てる。そのほか、書籍等資料購入費、物品費、国内旅費などの支出を予定している。
|