2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of the professionalization and entertainment development of local popular theater in the Showa period
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22K00135
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
中野 正昭 淑徳大学, 人文学部, 教授 (40409727)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 演劇学 / 大衆演劇 / 商業演劇 / 興行 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い初年度は各機関・施設の資料所蔵状況の調査を中心に進めた。研究計画では九州地方での資料調査・収集を予定していたが、コロナ禍ということもあり、地方の機関・施設は閲覧の予約や時間確保が難しかったり、私設のものは閉鎖となるなどの事情から十分な活動が行えず、もっぱら関東圏での調査・収集(九州の劇団の浅草興行)を行った。 以上の研究の成果として、本年度は単著1、論文2がある。単著『ローシー・オペラと浅草オペラ――大正期翻訳オペラの興行・上演・演劇性』では、大正期のオペラの特徴として翻訳オペラと興行化に注目し、二つのオペラ団――ローシー・オペラとオペラ座――の東京・関西での公演活動を対象に観客と演劇環境(特に興行と法制度)の観点から検証するとともに、上演台本の分析を行い、大正期特有のオペラ受容と展開を明らかにした。論文「商業演劇としての「俄」とドラマ性――佐賀俄・筑紫美主子劇団を中心に――」では、民俗芸能としての「にわか」と商業演劇としての「にわか」の相違を、筑紫美主子劇団をもとに「ドラマ性」の観点から検証した。論文「剣劇を再考する――誕生とジャンルの特性――」では、大衆演劇を代表する演劇ジャンルである「剣劇」の殺陣と暴力性に注目し、新国劇の設立と初期作品を検証した。 これらの学術的な研究成果とは別に、研究成果の社会還元としてテレビ番組『歴史探偵』(NHK総合、8月10日放送)、テレビドラマ『アイドル』(NHK総合、8月11日放送)に対して、近現代日本演劇研究者として、昭和戦時期の軽演劇を中心とする商業演劇に関する知見と資料の提供を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響もあり、計画していた九州地方での資料調査・収集は予定通りには実施できなかった。しかし、その代わりに次年度で予定してた関東地方での資料調査・収集を前倒しして行った。収集できた資料は量と内容の点で満足できるものとなった。 また国際シンポジウムでの口頭研究発表を予定していたが、研究代表者の近親者が逝去したことを理由に発表直前に辞退した。このため研究成果で予定していた国際的学術発表および海外研究者との情報交換等ができなかった。しかし、後日、シンポジウムに参加した日本人研究者とのオンライン研究会で研究発表を行い、それをもって論文集への論文掲載は行うことができた。研究計画からの変更はあるが、全体としては計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、九州地方を拠点とする商業劇団・大衆演劇団の興行の調査をつづける。具体的には、年に1~2回の地方出張によって関連資料の所蔵機関調査と資料収集、入手した資料の分析・考察、それらの論文や口頭発表による成果発表と他の研究者との情報・意見 交換を重ねる。研究成果の発表は国内だけでなく、国際シンポジウム等へ参加し、海外(主に台湾、中国、韓国等の東アジア諸国)の研究者と積極的に意見交換を行い、商業演劇・大衆演劇に関する情報と研究動向の連携を図っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により地方出張の回数を減らしたこと、本年度より本務校を移り(非常勤講師から常勤講師に着任)、個人研究費から物品費・出張費の一部を支出することができるようになったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額に関しては、次年度以降の研究計画の中で使用していく。
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