2022 Fiscal Year Research-status Report
1920年代日本の地方都市におけるフランス美術展:日仏芸術社による美術愛好の拡大
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22K00158
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中川 三千代 筑波大学, 芸術系, 研究員 (80896647)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日仏芸術社 / フランス美術展覧会 / 1920年代 / エルマン・デルスニス / 黒田鵬心 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1920年代に日仏芸術社が運営した地方都市でのフランス美術展の実態調査を行い、当時のフランス美術普及への貢献や人々への反響を明らかにするものである。調査研究は、デジタルデータの調査と実地での文献調査によって行われ、展覧会の実施概要に加え、広報、普及活動などの関連活動および、関連人物や団体への影響を対象とする。当該年度における研究活動としては、調査が主な活動となり、デジタル化された資料を中心とする収集と整理、具体的には展覧会の実施概要等に関する未収集資料の調査、および各地域の美術館・博物館、資料室との連携による、資料の補充、リストアップを行った。 デジタル化された資料の収集および整理に関しては、国立国会図書館および筑波大学附属図書館のデータベースを中心に行い、これまで詳細が明らかになっていなかった開催回数の少ない都市における調査を重点的に実施した。また、特に北陸地域における展覧会に関しては、後述する実地調査と合わせて資料の充実を図った。 地域の美術館・博物館との連携に関しては、金沢、富山、高岡の北陸3都市における展覧会の調査を重点的に実施し、計画時よりも早い段階での実地調査を行った。展覧会の入場者数が多くないという理由で、これまであまりスポットの当たることが少なかった富山、高岡における展覧会が、地域の美術愛好家や画家に影響を与えていることを示唆する資料が発見され、本研究の目的である、展覧会史や地方文化史に対して日仏芸術社が与えた影響の一端を明らかにすることができた。 加えて、個々の作品に対する追跡調査にも一定の進展が見られ、いくつかの作品について展覧会での展示などをきっかけとして、日本での現存および所蔵が明らかになり、現在に残る影響の手がかりとなるデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の今年度の実施目標はデジタル化された資料を中心とする収集と整理であった。資料の収集という点では、一部地方都市での展覧会に関する資料取集が完了しておらず、また整理も十分とは言えない。しかし、当初計画では、収集と整理を2年かけて実施する予定であり、現段階の進捗としてはおおむね順調であると考える。 また、同様に今年度の実施目標であった、各地域の美術館、資料室との連携を持った実地調査交渉に関しては、順調に進展した結果、当初予定を前倒しての実地調査を行うことができた。一方で、一部地域では交渉の進展が見られない例や、そもそも有用な資料を見つけることができていない地域もあり、総合的には、計画通りに進展した程度と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の計画としては、引き続きデジタル化された資料を中心とする収集と整理を行いつつ、実地調査を開始し、資料収集と整理を進めるものとしている。特にデータ化されていない資料の収集が重要な点になっている。まずは、前年度に引き続き、資料の収集と整理を進め、令和5年度終了時点における、デジタル化された資料の整理完了を目指す。また、並行して実地調査の交渉および実施を行い、デジタル化された資料を中心にその周辺に派生する資料を現地で収集、整理を進めるものとする。これらをもって、令和6年度以降の分析作業の開始を目標とする。 また、当初研究計画には具体的に言及していなかった、個別の作品に対する調査から研究の趣旨である日仏芸術社が1920年代のフランス美術受容や地方文化史に与えた影響が明らかになる例が、本年度いくつか見られた。これらについても研究の一部として継続的に取り組み、収集するデータの一部として、統合して整理するものとする。
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