2023 Fiscal Year Research-status Report
愛知県の仏像の特色に関する総合的な調査研究―技法の伝播や人の移動に注目してー
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22K00168
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 佳代 (小野佳代) 東海学園大学, 人文学部, 教授 (60386563)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 尾張地方 / 仏像 / 院派 / 未指定 / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、愛知県の未調査の仏像を対象に、像の様式や技法、構造といった特徴を調査し、美術史研究に資する基礎資料を積み上げていくとともに、調査時に銘文や納入品等を発見した際には記録に残し、関連文献の検討をとおして造立事情を明らかにすることである。特殊な様式をもつ仏像であった場合には、製作地、地域性、仏師、移動といった点からも考察を加えていく。 令和5(2023)年度は、愛知県の寺院を中心に、岐阜県の寺院も含め、延べ30カ寺を訪問し、平安時代から江戸時代までの幅広い時代の仏像、計82体の視察・調査を実施した。調査をとおして、①尾張徳川家ゆかりの諸寺に創建年代をさかのぼる古い仏像(他所から移した仏像)が伝存していること、また②愛知・岐阜エリアに南北朝・室町期の院派系統の仏師による仏像も少なからず現存していること、③古い仏像であっても彩色が新しい、あるいは修理の手が入っている等の理由で評価されない仏像が多いことが見えてきた。 調査した仏像のうち、文化財として評価できる像については、所蔵者と相談のうえ、各自治体の指定文化財にするよう働きかけを行った。結果、今年度に自治体の指定や登録に動いた仏像は7件である。 仏像や絵画など美術工芸の文化財指定については、各自治体の文化財保護審議会委員のメンバーに美術史学を専門とする人の有無が大きく関わっていると感じた。しかし、本研究課題で様々な寺院の仏像を調査し、その報告書を関連の自治体に渡したことで、文化財指定への動きが生まれたケースが少なくなかった。委員であるか否かに限らず、地域の未指定文化財を調査し、その結果を報告していくことは、結果的に地域の文化財の保護につながるのだと実感できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5(2023)年度は、尾張地方から美濃地方(名古屋市、一宮市、瀬戸市、小牧市、豊山町、半田市、美濃市、大垣市、大野町)の寺院での仏像調査が多く、その他にも三河地方(刈谷市、安城市等)で調査を実施した。計82体の仏像を視察・調査し、うち25体の仏像については調査報告書を作成し、各自治体の文化財担当の方に渡したが、なお作成途中のものもある。 調査のペースとしてはおおむね予定どおりで、調査エリアにおける院派仏師の仏像、尾張徳川家の仏像については、造像の様相が見えてきた。調査結果の一部は、大学の研究紀要などに報告を行った。ただし本年度の調査を振り返ると、調査と報告書作成に多くの時間を費やし、調査結果を細かく分析する時間が取れなかったのが反省点としてあげられる。今後はある程度、時代やテーマをしぼった調査が必要となるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6(2024)年度も引き続き、愛知県を中心に岐阜県の寺院の未調査・未指定の仏像を調査対象とする。これまでは県史や市町村史の調査から漏れた寺院を対象にアンケート調査を実施してきたが、今では多くの自治体や寺院から直接、調査を頼まれるケースが増えてきた。状況に応じて対応したい。 調査では、像の法量測定、形式、品質構造、保存状況等を観察して報告書にまとめるが、併せて仏像の造立事情や背景についても考察したい。また、これまでの調査で南北朝・室町時代の院派仏師の仏像に触れる機会が多かった。今後は、個別の調査報告だけでなく、愛知・岐阜エリアの院派作品を全体から俯瞰した研究も行っていきたい。
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Research Products
(3 results)