2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K00173
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Cultural History |
Principal Investigator |
神野 祐太 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (40757473)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 仏像 / 神像 / 塑像 / 螺髪 / 伊豆 / 東国 / 箱根 / 土肥郷 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は主に調査対象となる彫刻資料のリストアップ及び実査をおこなった。当館に保管されるこれまでの彫刻調査の調書及び写真を調査し、現在の彫刻史研究の水準に照らして再調査が必要と思われる作品についてリストを作成した。このリストは随時更新している。それらを元に14か所で実査をおこなった。たとえば南足柄市朝日観音堂にはこれまで室町時代とされる毘沙門天立像2体が知られる。今回、他像との耳の形状や構造を比較したところ、平安時代の製作に遡る可能性がでてきた。これらの調査成果を盛り込んで2023年秋に神奈川県立歴史博物館において特別展「足柄の仏像」を実施する。特別展にあわせて図録(A4判160頁)を作成予定であり、撮影した画像データや実査で得られた調査データを盛り込む。本研究の成果を社会に還元する絶好の機会である。また、展示中にも実査や写真撮影を実施し、基礎データの収集につとめたい。 東国に所在する出土塑像では、栃木県某所より出土した塑造の螺髪1点を調査した。発掘現場で掘り出された状態を確認することができた。栃木県では下野薬師寺跡や堂平遺跡から出土した塑造螺髪が知られるくらいであり、貴重な古代の仏像の資料である。現在、東日本では仏像の断片が発掘された遺跡が30か所あり、適宜出土品の実査を進めながら基礎データの蓄積を充実させていく。 足柄周辺の仏像として、もともと伊豆に所在し江戸時代に京都西往寺に移坐された宝誌和尚立像を実査する機会を得た。宝誌像には附属する2種類の縁起類が伝わっており、本研究期間中に翻刻を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな要因はコロナウイルス感染症の感染状況が落ち着いてきたこともあり、各寺院や機関に訪問することが実施しやすくなった。諸事情により調査を実施することができなかった彫刻資料もあるが、今後も所蔵先と調整しながらすすめていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は特別展「足柄の仏像」を予定しており、足柄地方の宗教彫刻が一堂に会する貴重な機会である。そのため展覧会期間中の実査を中心に研究を進めていく。基礎データや画像データの蓄積をおこなうことを基本としながら、形式や様式の比較調査をおこないたい。存在は知られているものの基礎データが紹介されていない彫刻作品が多くあり、最終年度の研究成果報告書としてまとめるだけでなく、学術雑誌等に論文や資料紹介を投稿し積極的に成果を公表するようにつとめたい。
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Causes of Carryover |
人数をかけての調査を実施予定であったが、実施することができなかったため人件費・謝金の支出がなくなってしまった。2023年度は大型の仏像の実査を6月下旬に予定しており、特別展期間中にも実査を予定しており、それに合わせて彫刻史を研究する学生のアルバイトや美術品専門の輸送業者に依頼する予定である。
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