2023 Fiscal Year Research-status Report
The indigenization of faith in Avalokitesvara and expansion of kingship in Angkor
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22K00184
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
宮崎 晶子 茨城キリスト教大学, 文学部, 教授 (80613504)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 観音 / ヴィシュヌ / 身体観 / 特質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は観音とヴィシュヌの身体観を調査する中で、特にヴィシュヌの呼称「ハリ」について集中的に碑文を読み解いた。本科研初年度である2022年度は「ヴィシュヌ」の身体的特徴にまつわる碑文内の記述などをまとめた。2023年度は「ヴィシュヌ」に対し「ハリ」はどのぐらいの頻度で使用された呼称だったのか、「ヴィシュヌ」との区別の有無について調べた。 アンコール美術においてはプレ・アンコール期から「ハリハラ」の彫像が造られ、他地域には見られない特徴が認められている。アンコール期に入り「ハリハラ」の彫像自体は減少傾向にあるものの、碑文の中では「ハリ」が付く地名や個人名が記されている。よって、「ハリ」は「ハリハラ」以外でも当該地域において認識され、信仰の対象となっていたことが分かる。また、ヴィシュヌの身体的特徴を有する図像に対しても「ハリ」と認識していた可能性があるだろう。同時にヴィシュヌは観音よりも先行して王権との密接な関係を築いていたことが碑文から明らかになった。アンコール・ワットに代表されるようなヴィシュヌ信仰と王権の関係を碑文からたどることができるだろう。 2023年度までに「ヴィシュヌ」「ハリ」についての碑文に記された情報を抽出できたので、2024年度は「クリシュナ」「ラーマ」についての記述から身体観と特質を調査する。そのうえで、当該地域における図像的特徴を照らし合わせ、神々の身体観をどのように認識していたのかまとめたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナが5類に移行してからは特に問題なく調査を進めている。「ヴィシュヌ」の次に「ハリ」の頻度が高いことには驚いたが、分量としては想定の範囲内と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
「ヴィシュヌ」「ハリ」「クリシュナ」「ラーマ」などの身体観および特質を碑文の中から抽出し、現存の図像と照らし合わせる。図像に関してはすでに網羅的に収集できる状況にある。「変幻自在」な観音とヴィシュヌが、アンコールにおいてどのような役割を担っていたのか、共通点を明らかにできるだろう。
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