2022 Fiscal Year Research-status Report
明治期の日本正教会伝道におけるロシア・イコンの包括的研究
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22K00194
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
宮崎 衣澄 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70369966)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロシア・イコン / クロモリトグラフィー / 明治期 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本正教会の未研究のロシア・イコンを調査し、明治期日本に伝来したイコンを総合的に分析することにより、現存数が少ない近代ロシア・イコンに未発見の資料を提示し、日本伝来イコンの特徴を明確化する、という目的達成に向けて、本年は2つの課題に取り組んだ。 一つ目は、京都正教会のイコノスタシス研究である。京都正教会のイコノスタシスを手がけたエパネチニコフ工房のイコンやイコノスタシスとの比較・分析や、京都正教会のイコノスタシスの図像的源泉となったと推定される同時代のイコンの調査を通して、エパネチニコフ工房における京都正教会イコノスタシスの位置づけを明らかにするとともに、同時代のロシア・イコンにおける京都正教会のイコンの特徴を明らかにした。具体的には、京都正教会のイコンは、エパネチニコフ工房の最良のイコン画家が手掛けたこと、モスクワの救世主キリスト聖堂の強い影響を受けていることを示した。 二つ目は、日本正教会が所蔵する印刷イコンの調査と分析である。筆者による京都正教会の調査で、20世紀初頭モスクワで制作された一連のクロモリトグラフィー・イコンが発見された。クロモリトグラフィー・イコンは、ロシアでは19世紀中期~20世紀初頭に急速に広まり、安価で大量に生産できることから、従来の修道士やイコン工房の職人によるイコンの存続を脅かす存在になった。クロムリトグラフィー・イコンは、芸術的価値が認められていないため、ロシアでは美術館の蒐集対象や美術史による研究対象にはなっておらず、学問的蓄積が少ない。本年はロシアの文献資料の収集と分析及び、日本正教会のリトグラフフィー・イコンの調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロシアのウクライナ侵攻による影響により、ロシアでの現地調査が難しい状況が続いている。そのため、ロシアの各美術館や教会のイコン調査、文献資料収集が予定通り実施できていない。 今後の状況を見て、可能であればロシアで現地調査を行い、困難な場合はこれまで構築した研究協力者の体制を利用し、資料収集の協力や助言をいただく。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、クロモリトグラフィー・イコンに焦点をあてて、研究を行う。次のような手順で研究を進める。 1)日本正教会が所蔵するクロモリトグラフィー・イコンの調査と分析。京都正教会所蔵の一連のイコンに加えて、各地の正教会に点在するイコンを調査し、工房や制作年を整理するとともに、図像を分析する。リトグラフィー・イコンは著名な聖堂のイコンやイコノスタシスから原画をとる場合が多いため、原画の推定を行う。 2)ロシアのクロモリトグラフフィー・イコンの調査と分析。上述のとおりロシアではリトグラフフィー・イコンの体系的な研究が行われていない。そのため近代ロシア・イコンに関する個々の研究論文の調査、愛好家コレクションの調査、歴史的資料の蒐集と分析になる。 3)明治期日本における印刷技術と正教会の印刷イコン制作。明治期日本正教会では、各地に建設された教会や信者に頒布するため、印刷イコンの制作に着手していた。当時の日本における印刷と、正教会の印刷イコンの関係について調査・分析を行う。
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Causes of Carryover |
ロシアによるウクライナ侵略、新型コロナウイルスの影響により、国内および海外での調査が計画通り進まなかったため。
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